6――世界でもっとも幸せな政略結婚

――1925年12月8日


「世界でもっとも幸せな政略結婚」

 そう評したのはニューヨークタイムズであった。

 その日、ソビエト連邦の追究を逃れて北海道に逃れたロマノフ王朝末裔のアリョーナ王女が、「ロシア皇帝」に即位。同日、大日本帝国の高圓宮継守内親王との結婚も発表された。

 ニューヨークタイムズの評した所以は、政略結婚らしからぬ二人の仲睦まじさが外国通信社のカメラにまで収められているところによる。事実、二人の仲睦まじさはその後も続き、アリョーナ女皇は男女七人の子を産むことになる。

 少数民族による独立運動が盛んで未だにソ連が支配出来ていないバイカル湖以東の極東地域に、日本がソ連との緩衝地帯となる衛星国を作るという日本の謀略。

 諸外国はそう判断して国家承認を渋った。

 しかし、発表から一ヶ月後に行われた盛大な結婚式の翌日に、正式にウラジオストック帝国政庁での新国家「トランスアムール帝国」樹立が宣言された事の影響は大きかった。

 ソ連は即日抗議声明を発表。同時にバイカル湖付近の国境地帯で大演習を行い、日本軍を威嚇した。



#100文字の架空戦記

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