第二話 牡丹江戦車戦の教訓

1948年7月29日 英領満洲 牡丹江市街地


「命中だ!」

瓦礫と化した牡丹江市街、一式中戦車の車内で快哉を叫ぶ。

この戦区を担当するのはソ連軍機甲師団の猛攻の前に、損害を出しすぎて後退した英領満洲陸軍BritishMAに代わって前線に出た大日本帝国陸軍IJA独立混成第1旅団ICA1であった。


一式中戦車自体の配備は1942年末から始まっていたが、とかく継子扱いされる帝国陸軍の常として、生産配備は遅々として進んでいなかった。

 

 本国では北海道の第七師団、そして大韓帝国京城ソウル駐留軍、そして外征軍である独立混成第1旅団しか満足に装備していない。


 しかし、なけなしの予算を使って配備されたその中戦車はすでにこの1944年の時点ですでに陳腐化が始まっていた。仮想敵国であるソ連やドイツ人民共和国、アメリカ人民共和国といったいわゆる「共産主義国枢軸クリムゾン・アクシズ」が急速に配備しつつある新型戦車「T-34」がその象徴であった。


 件の新型戦車は、砲塔正面に確かに四十七ミリ徹甲弾が命中した筈にもかかわらず、平然と前進する。事前の情報で聞かされていたとはいえ、目の前に示されると暗澹たる光景だった。


「弾かれました。敵の新型は前面装甲が厚いんでしょう」


 操縦手が冷静な声で告げる。


「47ミリ砲では駄目か…この戦車では奴らに勝てない」


#100文字の架空戦記

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