5



結局どちらにも買収された私は。




「まぁキスはびっくりしたけど、佐藤だし……。結局嫌じゃなかったのは、私だから」


「和香ぁぁぁぁ」




涙目で抱きしめて来るギャルの佐藤に、やれやれとため息を吐く。


緑も呆れながらそんな佐藤を見ていたけれど、「和香が嫌じゃなかったならいいわ」と引いてくれたのだ、よかったね。




「で、それで?キスだけ?」


「緑まだそこ掘り下げるの……?」


「だって私の周りで付き合ってる人なんてアンタたちくらいだから、興味深いんだもの。二人だとどんな話してんのよ?」




キスだけ?なんて聞かれてしまうと、ただのキスではないことを思い出してしまう。


特にあの……宅飲みした時とか。


自分から部屋に……招き入れた時、とか……。




むくむくと顔に熱が集まってくるのを、ニヤニヤとした緑の瞳がじっとりと見詰めてくる。


抱き着いている佐藤には気付かれていないようだ。




「かぁわい。何思い出してんだろう和香?」


「う、うるさい」


「珍しく反抗的なところもかわいいわね」


「だからぁ!みどりん、和香はあーしの和香なんだからね!」


「なになに!?可愛いのどがなんだって!?」




ようやくこちらに反応を示すようになったらしい鞠だけれど、なんてバッドタイミングでこっちを向くのか。


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