第11話

オレは冷静に勇者パーティを観察する。


どうやら今回の勇者パーティの人数はスタンダードな数である4人構成のようだ。


ジョブとしては―。

片手剣に盾を構える整ったルックスの男勇者。

両手持ちの斧を持ち、鎧を身にまとう大柄な男が戦士。

マントを羽織って手には杖を持った女の魔法使い。

頭にバンダナを巻いている弓を持つ男のシーフ。


バランスのとれている定番なパーティー構成だと言えよう。


そのパーティのリーダーである勇者が仲間に指示を出す。


「メルは付与魔法で後方支援を頼む!」

「わかったわ!カイト!」


「リカルドは弓で遠距離から援護を!」

「ハッ、まかせとけ」


「オレとタリムでヤツに突っ込むぞ!!」

「カイト、いつでも突っ込めるぞ!」


勇者(名はカイトというようだ)の指示によって、勇者パーティが戦闘態勢に入る。


……。


ダンジョンの中ボスをやっていて、オレはいつも不思議に思うのだが。

なぜ勇者のパーティというやつらは当たり前のように1対4で戦おうとしてくるのか。


ここまで多くのザコモンスターと戦ってきたとは言えど、1体のモンスターに対して複数で戦っておいて、勇者と名乗るのはいかがなものだろうか?


1対1で戦うべきとまでは言わないが、それで本当にいさましいものなのだろうか。

微妙にひっかかる。


まあ、それはいいとしても、もうひとつひっかかるところがある。


それは後ろのバンダナの男のジョブだ。


【シーフ/thief】って……ようは盗賊ではないか。


お前も悪ではないか…。

オレたち魔王軍とは、また別の悪だろうに。


盗んでるんだろう…?

色んな物を。


それでなぜ正義面して勇者パーティとして堂々と居やがるのだ。


このような冒険者たちと相対するたびに奴ら、人間どもは矛盾だらけの存在であることを実感する。




これだから魔王討伐を目指す冒険者ってやつらは気に入らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る