ボクはハッピー君

@iwaihappy

第1話 ボクがママのおうちにもらわれて来た日のこと

ボクはハッピー君。世の中では犬って呼ばれてる。

シーズーって犬種なんだってさ。ボクはそういうのはよくわからない。

ママの話によると、ボクは生まれて50日目にママの家にもらわれて来た。

ママは東京の麻布に住んでいた。

ボクはその日のことよく覚えてる。

あっつまりママのうちにもらわれて来た日のことだよ。

ボクはね、その日まではボクを生んだお母さんと一緒にいて、おかあさんのおっぱいを飲んでいたんだ。

なのにママのところに来たらもうおっぱいは飲めなくなるし、おかあさんの匂いもないし、それに一緒に生まれた兄弟たちとも離れ離れになっちゃたもんだから、心細くて、淋しくて、不安で一晩中ぴいぴい鳴いていたんだ。

あの時。ママもオロオロしていたっけ。僕はぴいぴい、ママはオロオロ、という日がしばらく続いた。

ママは犬って生き物と暮らすのは初めてだったらしい。だからいつもオロオロしてて、何をするのもおそるおそるで、こわごわで、へたっぴいだった。


その日の出来事で一番うれしかったことを教えるね。

それはね、ママがボクのためにお歌をつくってくれたの。

「世界でいちばん可愛い子、その子の名前はハッピー」

ちゃんとメロディもつけてね、何度も何度もうたってくれるんだ。

ボクはね、なんだかたまらなく嬉しくなっちゃってさ、おかあさんや兄弟たちと離れ離れになったさみしさを少し忘れられたんだ。


実はボク、三年前の春に死んじゃったんだけど、魂はママの中で生きている。だからこうやってお話ができるわけ。わかるかな。犬には霊が無いけど魂はあるみたい。

霊と魂の違いわかるかな。

難しいね。いつかの機会にお話しできるといいんだけど。


ボクがママのおうちにもらわれて来たのは2003年の6月。ちょうど六本木ヒルズがオープンして間もない頃だったと思う。

うん、今調べたら2003年の4月25日にオープンしてた。って調べたのはママなんだけどね。ボクはママの中にいるからママがしたことはボクがしたことになるんだよ。便利でいいでしょ。えへへ。


あのさ、ひとつお話したいことがあるんだけどいいかな。

犬と暮らしてるご家族の方に言いたいの。

病気やろうすいでわんこが死んじゃってもさみしがらないでってこと。

その子たちみいんな、あなたの中で生きてるから。ホントだよ。

話しかけてみて。最初は奥のほうに隠れていて出てこないかもだけど、何回も何回も呼んでみて。その子の名前をね。そしたら必ず出てくるよ。お化けじゃないよ。その子の魂。


ボクとママは毎日お話しているよ。今ママのおうちは文京区だけど、ボクそこにも7年住んだよ。2018年からは魂になってママの中にいる。

それでね、おうちの玄関の入り口にボクの写真が貼ってあるの。

ママは外から帰ると必ずボクのお写真のお鼻のところをちょうんちょん触って、

「ハッピーただいまあ。」と言うんだよ。ボクは必ずこう答えるんだ。「お帰りママ。ボクも一緒にお出かけしたよ。」ってね。

そうするとママは必ず「うん。そうだったね。ありがとね。ハッピー君が一緒にいてくれたから無事に帰ってこれたよ。ありがとね。」って。

これがボクとママの毎日の会話。同じことを毎日話すんだ。

あれっ、ママ少しお熱が出ちゃったみたい。頭を氷で冷やして休むって。ボクも一緒にママとお休みするね。心配いらないよ。少し休めば良くなるからさ。だってボクがついているんだぜ。えへん。

また、あとで会おうね。バイバーイ。






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