第7話会長室付特別検査室の業務
再び、会長室のドアがノックされた。
会長秘書の枝村美紀と、本店と子会社の両人事部長が入って来た。
会長の顔は、再び厳しめに戻る。
優は、会長の気持ちを、「仕事に戻る」と理解した。
会長に目配せ、ソファから立ちあがり、両人事部長の前に立つ。
本店人事部長
「ではまず、会長室付特別検査室に」
優が頷き、両人事部長と歩き始めると、会長が優を呼び止めた。
「とにかく、全て終わったら、この部屋に」
「終わるまで、待っている」
優は、「はい」と答えるのみ、とても、それ以外に返事が見つからない。
会長室付特別検査室は、同じ階。
特別検査室前で、本社人事部長から優に説明があった。
「スタッフは、特別検査室長、特別検査室長代理、検査室員が4人、今日から優君が入るので、計7人になる」
優は、知らないことだったので、「はい」と頷くのみ。
それ以上に、「見知らぬ本社の偉い人たち」の中に入る方が、緊張する。
本社人事部長、子会社人事部長に続いて、優は特別検査室に入った。
説明の通り、検査室内の職員は、6人。
全員が立って、優を見ている。
本社人事部長は、手続きに基づいて、優を紹介する。
「本日付けで、ここの部署に配属になった、佐々木優君になります」
優が、緊張気味に「佐々木優と申します、不慣れですがご指導をお願いいたします」と、深く頭を下げると、特別検査室長が近づいて来た。
そして、また腰が抜ける程、驚いた。
特別検査室長のネームプレートをつけた人物は、両親の葬儀以来、本当にお世話になった杉田弁護士だったのだから。
そして、優に握手を求め、「特別検査室長の杉田です、ようこそ」と、自己紹介。
子会社人事部長が、優と杉田検査室長を見て、少し笑う。
「どうやら、旧知のようで」
その言葉で、本社人事部長と杉田検査室長も笑うけれど、優は混乱するばかり。
そして、混乱しながらも、他の検査室員の中にも驚く人がいた。
検査室長代理も旧知、両親の相続の時にお世話になった松本税理士だった。
優は松本検査室長代理にも深くお辞儀をして挨拶をする。
その後は、他の検査室員に挨拶。
尚、男性検査室員が一人、吉村と名乗る、落ち着いた雰囲気、年齢は30代前半。
女性検査員は三人、高田、鈴木、大塚とそれぞれ名乗る。年齢は全員20代らしい。
優と特別検査室員全員の顔合わせが終わり、今度は杉田特別検査室長が、特別検査室の業務を説明する。
「優君も、知っているとは思うけれど、本社および子会社に内部検査室がある」
「この特別検査室は、その垣根を越えて検査ができる部署」
「本社および子会社の内部検査室と同行して、検査をすることもある」
「かなり強い検査権限を持つ部署と理解して欲しい」
「それから、優君は公認会計士の資格がある、他の検査室員では、吉村君は弁護士資格がある」
「高田さんも公認会計士資格がある、鈴木さんと大塚さんは、通関士を持っている」
優は、その説明に、一つ一つ、頭を下げる。
そして、頭を下げながら、「やはり超格上の人たち、場違い」と、感じている。
杉田特別検査室長が話題を変えた。
「優君、会長から内線で話があった」
「これから子会社の無通告の検査をする」
優は、思わず身構える。
「あ・・・はい・・・私の取り越し苦労であればいいのですが」
内容も、他の検査室員に知られているかもしれない。
単なる取り越し苦労の場合、恥ずかしさもある。
緊張するので、身体も震えてしまう。
その優の肩を、吉村が笑顔でポンと叩く。
「取り越し苦労であれば、問題はないよ、落ち着いて」
「会社のためのこと、不安は取り除かないと」
優は、その言葉で、少し落ち着きを取り戻すことになった。
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