第30話、冒険者に復帰?

「ねえ、おじさん」


「なんだ」


「私。また冒険者やろうかな」


「必要ない」


「なんで、せっかくやる気になってるのに」


「ここで生活する分には金はかからないし、金は十分にためてある」


「そういうんじゃないの。

こんな体だからこそ、何か支えが欲しいの」


「……その気持ちは、わからんでもないが……」


「お願いします。足手まといになるってわかってる。

でも、やりたいの」


「……わかった。だが、やるからには自在に飛べるようになってからだ」


「ありがとう!」


 俺はエリスに腕に装着する風魔法の魔法具を与えた。

今のベルトで浮いているのだから、あとは方向性を与えてやればいい。

エリスは毎日外で飛ぶ練習をするようになった。


「ダメだ、方向転換が遅い」


「はい!」


 一か月もすると、エリスは俺と同等には飛べるようになった。


「もう大丈夫だな」


「うん」


「じゃあ、仕事を受けに行くか」


 俺たちは依頼を受けに、冒険者ギルドを訪れた。


「シルビアじゃないか」


「あっ、エリスとおじさん」


「受注か?」


「ええ、この子もそろそろかなって思って、試しにCクラスの仕事をしてみようかなって。

それよりも、エリス、大丈夫なの?」


「うん、両脚は義足だよ。

でも、頑張って飛べるようになったから」


「何か、手伝えることはないのか」


「大丈夫。無理しないようにゆっくりとやってくから」


「そうか、頑張れよ」


「そっちもね」


 俺たちはAクラスのギガンテスを受注した。

ギガンテスは3mほどの巨人で、遠隔の攻撃手段をもたないためちょうどいい。



「じゃあ、一人でやってみるんだ」


「うん、大丈夫」


 エリスはギガンテスの10mほど上空から魔導銃を放った。


ダダダダダッ


 ギガンテスは前のめりに倒れる。


「まだだ、確実に息の根を止めろ」


「わかってる」


 こうして、エリスは復帰戦を終えた。


「怖くなかったか」


「うん、大丈夫」


 俺たちはギルドに戻り、依頼終了の手続きを済ませて帰宅した。

その夜、エリスが俺の布団にもぐりこんできた。


「どうした?」


 応えはキスだった。


「いいのか」


「うん。

でも……初めてなの……」


 俺はエリスを抱いた。

ことが終わり、エリスは俺の腕枕で朝まで眠った。

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