第17話、こんなとこを買うの?

最初の家は、金貨1000枚の貴族の別邸だった。

広大な敷地は樹木と雑草が被い、屋敷にたどり着くのも一苦労だった。


「このような状況ですから、建物の価値は考えておりません」


「土地の値段ってことですか?」


「さようでございます」


「こんな郊外で、土地の価格っていわれてもねえ」


「こちらの図面をご覧ください。

向こうに見える山までが敷地でございます」


「そんな土地要らねえよ」


「そうもうされましても、一式ですので切り売りはいたしておりません」


「ん?あれは馬じゃねえか」


「このエリアには、他では見れない動物がいたり果実があるようです」


「金貨500枚なら考えてもいいな」


「おじさん!」


「こ、ここはさすがに……」


「まあ、家の中を見せてもらおうよ」



「このように、時々手入れをしておりますので」


「手入れの痕跡が見えねえよ!」


「無理!」


「こんなの、家じゃない!」


「ですから、土地の値段だけでございます」


ガチャっ


「こ、これは……

なんで風呂があるんだ」


「何に使うのかわかりませんが、この屋敷には他ではみないおかしなつくりの部屋がございます」


「前の持ち主は?」


「オオマエダタゴサクとなっておりますが、貴族ではないようです」


「ふむ、金貨500枚でどうだ」


「おじさん!」


「狂ったの!」


「結構でございます。

では戻りまして正式に手続きを」




「なんでこんなところを買ったんですか?」


「前の持ちぬ主は、俺と同じ国の出身だ」


「おじさんの?」


「多分、ここは宝の山だぞ。

この文字が読めるものにとってだが」


「これって文字なの?」


「なんて書いてあるんですか?」


「この家には地下室がある。

これを読めるなら、この家を入手しろと書いてある?」


「地下室ってワインを貯蔵する部屋のこと?」


「そんなところだ。

さて、暗くなる前に地下に降りる階段を探すぞ」


「階段ね、了解」


「カギは引き出しの中って書いてあるな。

うん、これだな」


俺はカギを手に入れた。


「で、鍵穴は浴室の壁っと、これだな」


ガチャッ


突然、家全体が小刻みに震え、ウイーンと機械的な音が響き渡った。


『私はハウス。起動のパスワードをどうぞ』


「わっ、誰?」


「とうきょうといたばしく」


『パスワードを確認しました。

起動いたします』

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