第7話、く、臭いです

オーク討伐は人気の依頼で、近場のものはなかった。

仕方なく、少し遠方の依頼を受けて、宿に断りを入れる。


「すみません。オークの討伐で出かけますので、3日後に帰ってこれないかもしれません」


「なら、オークをうちにもらえるかい。

オークだったら金貨一枚で引き取るよ」


「討伐証明部位の左手が欠けてもいいですか」


「ああ、問題ないよ」


「じゃ、行ってきます」


近い場所にあったオーク討伐をもう一つ受けて出発する。

その村まで歩いて丸一日くらいだ。


この世界に馬はいない。

移動は徒歩なのだ。


歩きなれていないし、革靴はつらい……

いつしか、靴の中は汗でぐちゃぐちゃだった。


そういえばと思い出し、有人Bからの荷物を取り出す。

革の柔らかそうなサンダルが入っていた。

俺は靴を収納にしまい、サンダルに履き替えて快適に歩くことができた。


何とか依頼のあった村にたどり着き、その日は泊めてもらう。

久しぶりのまともな食事はおいしかった。


翌朝、畑に現れるというオークを待ち伏せし、絶対回避を使って小刀で何か所も切り付ける。

一時間ほどの戦闘で、どうにかオークを倒すことができた。

ゴブリンの時みたいなへまはしない。

しっかりと血抜きをしてカバンにしまう。

村に討伐部位を示して依頼完了のサインをもらった。


続いてもう一頭のオークも仕留め、俺は意気揚々とギルドに帰った。


「く、臭いです……」


討伐完了の用紙を出したのだが、紙が臭いという。

どうやら、俺の鼻はここにきて鈍感になっていたようだ。

毎日のようにゴブリンの耳取りをしていた影響かもしれない。


匂いの原因は靴のようだ。

汗に濡れた革靴をそのまま収納に入れた弊害だった。


「す、すみません」


臭い消し代として銀貨3枚を請求されたが、手元には銀貨3枚しかない。


「すみません、このお金で口座を開設しないと報酬がいただけないので、後払いでお願いします」


オーク討伐2件で金貨1枚。

臭い消し代を差し引かれて、口座には銀貨7枚が残った。


その後で、宿に戻ったのだが、ここでも臭いが駄目だと言われ、オークは半値で引き取られた。

これで、借金は帳消しである。


俺は、そのまま川へ行き、カバンと革靴を洗った。

なんとか臭いがとれて宿に戻ったのだが、もう宿の食堂は閉まっていた。


腐った革靴の臭いのする干し肉は不味かった……


それでも、初めて自分の稼いだお金が、まだ銀貨7枚口座に残っている。

俺は、満ち足りた気分で眠りについた。

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