売る言葉は性格に比例する

ライムの、身を乗り出してのツッコミに、我知らず、リックの眉がひそめられる。


「誰だ? このけったいなお嬢さんは」

「誰がけったいなのよっ! リックとか言ったわね、あたしはライム! 呼び捨てでいいから、お嬢さんは止めてくれる!?」

「…元気な奴だな。もしかしてシグマ、お前も似たようなことを言われたのか?」

「…まあな」

「だからか…いつになく不機嫌そうなのは。まあいい。んじゃさっきの質問に答えてもらうとするか」

「そうだな。でも、もう遅いから、今夜は一晩寝て、明日、街に向かいながら話すというのは…どうだ?」


シグマの提案に、リックは軽く頬を掻いた。

シグマとは昔馴染みの為、彼が何を言いたいのか、リックには粗方の見当がついているらしい。


そしてそれは、次のリックの言葉によって反映された。


「っつー事は、俺も…結局はお前らのお供になるわけだな?」

「当然だろう」


しれっとして、シグマが答える。それにリックは、更に眉をひそめた。


「おいおい…即答かよ」

「どうせ暇なんだろう? 久しぶりに会った幼馴染みに付き合うくらい──」

「!あー、分かった分かった、付き合えばいいんだろ?」


リックが頭を抱えてひらひらと手を振ると、何故かシグマはしてやったりという笑顔を浮かべた。


「よし、じゃあ早速行くぞ。まずは歩きだ」

「!げ、歩き…!?」


軽率に答えたリックの頬がひきつる。

ライムも、そこまでは行かずとも、こめかみの辺りがぴくぴくと戦慄いている。


「…何だ、不服か? だったらここに…」

「!…い、いやいや、歩く、歩くから…

頼む、もういちいちまともに言葉を取るな!」


諦め以外の何物でもない言葉と共に、リックは即答した。

その様子を見ていたライムがぽかんとしていることなど気にも止めず、リックは軽い畏怖混じりに呟いた。


「…ったくこいつ、相変わらず過ぎるぜ。やる事なす事、あの頃と全っ然変わってねぇ…

でもまぁ、仕方ねぇか…こいつに逆らえる奴が居たら見てみてぇもんだし、何よりこいつは──」

「何なの?」


呟きに耳をそばだてていたライムが尋ねると、リックは目に見えて狼狽え、動揺した。


「!…い、いやいや、何でもねぇ!

何でもねぇから…早くもう行こうぜ!」

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