第28話 過去の話を聞いてみるチャンスですわね


「まず最初に言っておくと、中学が一緒だったのは織子だけ。これは知っている?」

「ええ」

「んでえ、一年の時に織子を通じて仲良くなったのよねえ」

「……仲良く、ですか」

「あによ……」


 涙ぐむ才原さんがわたくしへ疑惑の目を向けてくる。しかし、そこで涼太が首をひねってから口を開いた。


「ちょっと待って。姉ちゃんと才原の姉ちゃんは中学二年の時から仲が悪いって聞いているよ? どうして高一で仲良くなっているんだろう」

「それは……」

「わたしから言うわ。……美子は小学校まではそうでも無かったんだけど、中学に入ってからモデルの娘ってことでやっかみを受けるようになったわ」

「ふむ」


 ――で、才原さんの説明によると美子は中学二年で本格的にいじめというものを受けていたそうです。

 それを助けていたのが才原さんだった。しかし、そのいじめの手が彼女にまで及んだことにより少しずつ美子が距離を置くようになっていった、ということ。


「小学校からの付き合いだし、ショックだったわ。それと同時に自分も美子も弱いんだなあって……。だから、距離を取って影から助ける方法を選んだのよ」

「友達少なかったもんねえ織子」

「有栖、うるさい」

「なるほど……概ね、関係が読めてきましたわね。高校で友人が増えたことにより、積極的に関わろうとした、というところですか」

「まあね。だけど、まあ有栖の見た目、莉愛の粗暴で不良みたいな扱いを受けているから、今度はわたしが先生達に睨まれることになった――」

「はあ!? 織子だって反抗的だって先生に怒られているじゃん!」

「だよね。私達のせいだけにしないでくれる……?」

「わ、悪かったわよ……」


 さて、二人に詰め寄られた才原さんはともかく美子を取り巻く環境は概ね分かりました。そして中学までのいじめが原因で暗く……というのはなんとなく分かるのですが、それだと『今』がわかりませんわね。


「高校に入ってからはどうなのです? 机に花瓶くらいしか今のところそれらしい痕跡がありませんし、いじめている主犯はあなた達だと皆、思っているようですけど」

「それねー。あたし達も知りたいのよ。……美子ちゃんが飛び降りる前の段階で、あの子かなり追いつめられていたんだけど、なんなのかを教えてはくれなかったのよねえ」

「そうなのですか? いじめの実態は?」

「それも不明。美子はキョドってたけど、殴られたり蹴られたりみたいな暴力は無かったわ」

「ただ、誰かに脅されている感じはあったのよね。いつも周囲を気にするようになったし」


 そういえば外傷は飛び降りた時以外の擦り傷以外は無い……。


「他に美子と接触している人物に心当たりは?」

「接触って……。ええっと、友達自体は少なかったけど、委員長はよく構っていたわね」

「委員長……里中さんですか。彼女は二年から同じクラスに?」

「そうだね」

「ではもう一つ。一年の頃に美子はそういう態度はありましたか」

「自分のことじゃん! って違うのかあ……ううん、一年の時はあたし知らないんだよね」

「特にそういうことは無かったわ」


 と、才原さんが深く頷く。

 ということは二年からということになる。先生も怪しいですが――


「あ、そうですわ。あなた方の中でこれに見覚えがある人は居ますか?」

「……これは」

「星型のイヤリング……」

「これってあたしの!?」


 例の廃屋ビルで拾ったイヤリングを目の前に差し出すと、三人の内、佐藤さんが反応を示す。


「ちょ、ちょっと見ていい?」

「すり替えたりしないでくださいね」

「だーいじょうぶだってぇ。……うん、なるほど……」

「どうなの有栖?」

「これ、あたしのじゃないや。海原先生に没収されたやつかと思ったんだけど」

「佐藤さんのは先生没収されているのですか?」


 新情報だと思い、興味があると話を続けることに。すると佐藤さんは唇に指を当てて小さく頷く。


「これって一応、限定品でさ。同じように見えてちょっと細工が違うんだ~。あ、片方あるから見る?」

「ぜひ」

「……本当だ、レミ姉ちゃんが持っているのは星の先が尖っているけど、佐藤先輩のは丸っこい……」

「……確かに」


 涼太が覗きこんできたので一緒に確認すると、わずかですが形と色が違うことが判明しました。

 となると佐藤さんは白でほぼ間違いなさそうですわね。


「てゆうか美子ちゃんどこで拾ったの~?」

「もう素性を明かしたのですからレミで大丈夫ですわ、佐藤さん。さて、どうしましょうか。もう少し三人を信用できる材料が欲しいのですが」

「信用?」

「ええ、敵意は無しと判断しました。ですが、この三人の内誰かが『真犯人』と繋がっていた場合、次の手を打ってくるかもしれません」

「美子……! いや、レミあんた――」


 カッとして立ち上がる才原さん。飛び掛かってくるかと思いましたが、それを田中さんが制した。


「待って織子。美子……じゃない、レミの言う通り、信用問題という部分は共感できるわ。美子は私達の友達だったけど、この子はそうじゃない」

「う……」

「そして誘拐が再び起きた時、不利益を被るのは私達もそうよね?」

「その通りです」


 隠し事があるまま一緒に居れば、再び誘拐事件があった際、一度は疑いが向くものですわ。

 特になにも無かったとしても『そういうことをするかもしれない』というレッテルはついて回るので学校生活は面倒になるはず。


 そして真犯人の目的はわたくしの排除。三人に疑いの目が向けられるか、登校しなくなれば周囲の目を逸らしたまま逃げ切れる。噂はやがて消えますしね。

 すると三人は意を決したといった感じで顔を見合せて、頷いた。

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