昔の夢①

 × × ×


――夢。


「ねぇ、ボク。一人?」


 それは、とんでもなく大柄な男だった。体中が脂肪まみれのブヨブヨで、額には脂汗をかき、息を切らせて俺を見ていたのを覚えている。


「うん、そうだよ」

「そっか。……お父さんと、お母さんは?」

「いないよ。僕、捨てられちゃったの」


 捨てられた。この言葉を口にするたびに、心が痛かった。でも、昔から事実だけは受け止めなきゃいけないってそう信じてたんだ。


「なら、どうしてこんなところに?」

「今日は、狗神園いぬがみえんの遠足だから」

「狗神園?」

「僕がいる施設だよ。でも、僕迷子になっちゃったんだ」

「へぇ。じゃあ、おじさんがみんなのところに連れて行ってあげるよ」

「ホントに?ありがとう、おじさん」


 すると、男は俺の手を掴んで、半ば早足で歩きだした。俺は引きずられて、ほとんど追いつかずに少し浮いたまま着いて行ったんだと思う。そこで「痛い」と訴えたら強く握りしめられて腕を折られ、メソメソと泣きながら謝り続けたんだ。


 多分、それが男を興奮させたんだろう。


「おじさん……。うぅ、痛いよぉ」

「ダメだ。我慢出来ねえ!」


 言って連れられたのは、茂みの向こうの暗い場所。そこに放り投げられて地面に突っ伏すと、男はすかさず着ていたシャツを脱いで、鼻息荒くいきり立ったそれを目の前に晒してから、俺の体に覆いかぶさったのだ。

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