第8話 入学式のご挨拶と猫使い

今年の新入生代表挨拶に選ばれました。

と言ってもご挨拶程度なので、誰がやっても良い様な気もします。




中等部までは、だいたい各派閥の一番爵位の高い方の子息子女が、持ち回りでやる事になっているそうです。




今回はボルネオール侯爵家の番でした。




それなのに、他派閥の侯爵家の次男の方から、もの凄い目で睨まれています。

あの方は今後、要注意ですね。




それからシルバーの事ですが、まだ姉達以外の誰にも部屋で飼っている事はバレていません。

私が授業を受けている昼間は、いつ抜き打ちチェックが入っても良い様に、外で遊んでいる様です。




ある日、教室移動中にシルバーが、何匹もの学園猫達を従えているのを目撃してビックリしました。




部屋に帰ってから聞いてみたら

『前のボス猫に勝ったので、シルバーがボスになった。』んですって。




お陰で学園の内外に、まさかの猫による情報網が出来てしまいました。

学園猫達はかなり頭が良く、だいたいの猫達は人間の言葉が解るそうです。




コレで格安で、しかも人間が侵入出来ない狭い場所にまで情報網が出来ました。




コレが東洋にいるという、【忍猫※1】というものなのですね!




その内、犬も手懐けてみるのも良いかも知れませんね。




……出来ませんでした。

犬を触って来ると猫達が嫌がるのです。

残念……




数日後、事件が起こりました。




ピピナのペンが無くなったのです。

皆んなで心辺りを探してみましたが、見つかりませんでした。

「お父様とお母様に入学祝いに買って頂いた大事なペンでしたのに……。」

そう言って泣き崩れてしまいました。




いったい誰の仕業なのか解りませんが、ピピナを泣かせるなんて許しません!




【忍猫】出動です!




とりあえず、目撃探しから始めましょう。

初等部の近くにいる猫達に、シルバーを介して質問してみたら、すぐに目撃が見つかりました。




ただし、相手は猫なので人物の特定は難しそうです。




解ったのは、何人かの男の子達がピピナの机の周りで遊んでいたという事。

その中の1人が何かを踏んで、慌てていた事。




そこへピピナが戻って来てペンが無い事に気付いたらしい。




とりあえず、その場にいた人達の特定かしら?

ピピナに『その時教室に居た人を覚えているか?』聞いてみたわ。

残念ながら覚えていなかった。




「いつも教室で本を読んでいる、グレース様なら何か知っているかも?」




と、いうカールの意見で彼女に聞いてみる事にした。




「え?2日前の昼休憩に教室に誰が居たか?」




彼女は少し考えてからこう答えた。




「ゴルド侯爵家の人達(派閥)が居ましたわね。

教室内で騒いでいたから、『読書の邪魔』と注意しましたけど、まったく聞いてくれませんでしたわ。」




ゴルド侯爵家というと入学式で私を睨んで来た方ね。

確か『レグスト・F・ゴルド様』……



―――――――――――――――――


※1

【忍猫】


もちろん、そんな者は居ません。

東国から『忍者犬』の話しが伝わって来る間に、間違った情報が伝わったようです。

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