第4話 パーティメンバーが出来ました。

目が覚めた。

少し硬くなった体を伸ばし、ゆっくりと立ち上がる。

見渡すと、辺り一面を埋め尽くす無数の花たち。

ここにいるのは俺だけか? 

──いや、


『あっちいこーよ!』

『いーよ!』


そこにはまだ5歳くらいの男女の姿があった。

男の子は女の子の手を引いて走り回っている。


(ん? あの男の子が下げている剣に見覚えがあるぞ……)


赤色の鞘に収まっている反りのある短剣。

あれは──家に飾られていたものと同じだ。

それに微かだが二人の顔立ちにも懐かしさを感じる。


(間違いない。あれは昔の父と母だ)


直感も多く占めているだろう推測。

だがそれとは別に確かなものが感じられる。


『あの──』


話しかけようとした少年の声は、突如舞う花びらによってかき消されてしまう。

徐々に崩壊していく世界。


『ケッコンしようね』


最後に幼女が言った言葉は少年に届いただろうか。

覚醒していく意識。視界が白く塗り潰されていく。


「ッ! ここは……一体俺は……何を……?」

「目が覚めたのね」


周りはもう暗いが、どうやら近くの焚き火のおかげで最低限の視覚はある。

焚き火の近くには少女がもう一人いた。

華奢な体つきをしていて、顔はかなりの美人だ。

オレンジ色の長髪はサラサラしていて、鋭くなっている紺色の目は見たものを圧倒するだろう。


「あなたがここで倒れていたから、そのまま立ち去るのは後味悪いし見張っておいてあげたのよ」

「優しいんだな。おかげで助かったよ」

「別にそんなのじゃないわ。 ただの自己満足よ」


起きあがろうとするが、ひどく頭が痛む。


「それはそうと、これはあなたがやったの?」


少女の目は、今日死闘を繰り広げた狼の死体へ向いていた。


「あぁ、本当に間一髪だったよ。 おかげで魔力が枯渇しちまった」

「この魔物は危険度Bランクの魔物よ。あなた冒険者よね。何者なの?」

「俺はルイス・サストレ。情けないことにEランク冒険者だよ」

「嘘を吐かないで」

「嘘じゃない。これを見ろ」


冒険者カードを彼女に渡しと、驚いたとばかりに目を見開いた。


(そりゃそうだよな。Eランク冒険者が危険度Bランクの魔物を倒しただなんてどこの御伽噺だよって感じだ)


「どうやら信じざるを得ないようね。私はカーネル・クリューツ、Bランクよ」

「ねぇあなた、私とパーティを組む気はない?」


彼女は立ち上がるとこちらを見下ろしながら、そう提案してきた。


「パーティって……俺はEランク冒険者だぞ? こんな俺と組んだって──」

「お試しよ。あなたが本当に使えない無能ならすぐ捨てるわ」

「まぁ、助けられた恩もあるしな……。分かった。パーティを組もう」


起き上がろうとするルイスの様子に気付いた彼女は、少し顔を逸らして手を差し伸べてきた。

まだ頭が痛むが、彼女の手を取って起き上がると、「早くいくわよ」と言って先に行ってしまった。


──まだ仮だが、こんな俺にパーティがで出来るなんて、ちょっと前の俺には考えられないだろうな。


すっかり頭痛など忘れて、明日が待ち遠しそうなルイスであった。

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