大規模拡張シェルターステーション 其の二

 

 ミリタリーは、直径一キロのこのシェルターステーションを重視しています。

 何といっても廉価、そしてミリタリーオフィスの許可はいらない、建造も含めて自由裁量が可なのです。

 事後報告で済みますからね、ただね、三軍統合司令部での許可はいりますよ、軍部の中で処理が出来るというのが、便利なのですね。

 何処の世界も、事務屋さんは煙いようですね。


 ヨミにもオルメカにも、標準ステーションにある造船ドッグはあります、それを活用して、三大ミリタリーのローカル戦力を向上させる計画のようです。

 もちろん、プラネテスも、この計画に噛んでいます。


 本来の貨物鉄道用のシェルターステーションは、きわめて小さいもので、直径は一キロ程度、これも二層になっており、表層と二層の間は高さ500メートル、ここに色々なオプションが組み込まれます、まあ、マイクロ・インフェニティ・カーゴを組み込むと二層は無理ですがね。


 表層に貨物鉄道のステーションがあり、ステーションの地下がそのまま居住空間階につながっています。

 そのほか、表層には六つの伸縮回廊基部の、開口の蓋がところどころに盛り上がっています。


 第二層の下部には、高さ5メートルの中間層があり、ここにカプセルホテルのような7,000人収納の非常用地下居住区もあります。

 共用部分はトイレとシャワーのみ、ここの居室数が、シェルターステーションの最大収容人数なのです。

 メイン動力炉とメインコンピューターは、この下にあります。


 ほとんどのシェルターステーションにいえることですが、第二層から下は全て同じ。

 ささやかな防御バリアと陽子崩壊領域設定バリアを装備して、小規模ですがノヴァも起こせます。


 非常用地下居住区は人がすまなくても、緊急の為に設けられているのです。

 半分は倉庫にすることも認められてはいます。


 グレモリイは大規模拡張シェルターステーションの構成を考えていましたが、全部で9隻の構成として、中央にマイクロ・インフェニティ・カーゴオプションステーションを据えました。

 この中央とつながる8隻のステーションは小型建造ドッグオプションステーション1隻、広域探知オプションステーション2隻、搭載できる最強兵器のマグネター砲搭載ステーション4隻と、物質転移装置搭載ステーション1隻です。


 物質転移装置とは、いわゆる転移爆弾を相手に放り込むものです。

 ボンバーと呼ばれる中性子過剰核誘導弾とか、船内に放りこまれたら大変です。


 さらに言えば、マイクロ・インフェニティ・カーゴはマイクロブラックホールを作り出せます、こんなものを放り込まれれば……ただこの場合、後始末が必要です。

 『ホーキング放射』を上手く利用して消滅させるわけです。

 今のところ、かなり面倒なので、あまり使わないようになっていますけどね、銀河を消し飛ばすのは難しいですが、星団ぐらいなら可能なのです。


 まあ、陽子崩壊領域設定バリアで十分以上ですね。


 ラグナロク戦争に勝利したネットワークは、物量による飽和攻撃にも難なく対処できます。

 その気になったら、『ビッグリップ』を引き起こし、宇宙を消滅させることも可能なのですが、さすがにシェルターステーションレベルでは無理です。

 さらにいえば、『大質量ブラックホール』を発生、たたきつける装置もシェルターステーションレベルでは無理です。


「マイクロ・インフェニティ・カーゴがあれば、何があっても大丈夫です!」


「それにしてもとことん戦闘ステーションにしたのね、住むとこがないじゃないの?」

「今回は全自動戦闘シェルターが目的ですので、有機体は不必要、私の住む場所はどこかの非常用地下居住区にします」


「それはいけない、少し試験は待ってもらおう、マレーネさんあたりに相談してみるわ」

「イザナミ様、私の事より、ヴィーナス様のお側におられたほうが……」


 実はヴィーナスさん、この戦争で大けがを負い、この間、やっと面会謝絶が解除されたのです。


「ありがとう、でもいいのよ♪お元気で我儘ばかりおっしゃっておられるわ、昨日ね、貴女の試験航海の話をしたらね、休暇なのに申し訳ないと云われていたわよ」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る