第12話

 なんて話していると、ホームルームの予鈴を告げるチャイムが鳴った。



「やば、急がないと。行くぞ、清澄」

「ああ。またな、香奈。また昼に」

「あぅ、寂しいです……日向正吾! 少しの間だけ、トモせんぱいを貸してあげます! 取らないでくださいよ!」

「誰が取るか」



 んべーっ、と舌を出し、久城はぱたぱたと廊下を走っていった。



「廊下は走るなよ、怪我したら清澄が悲しむだろ」

「余計なお世話です! でも歩きます!」



 捻くれてるんだか素直なんだか、わからない奴だな、相変わらず。



「愛されてるな、清澄」

「本当、今まで付き合って来た中で、一番俺を理解してくれる彼女だよ」

「そのセリフ、あんまり外で言わない方がいいぞ。刺されるから」

「日向の前でしか言わないから、こんなこと」



 そういうことも言わないでほしい。俺が久城あたりに刺されそうだから。

 全く、これだからモテ男は。


 清澄と並んでクラスに向かう。

 清澄がデカくてモテるから、まあ目立つ目立つ。

 そのせいで俺まで目立つんだから質が悪い。



「モテ男は大変だな」

「いや、日向も結構モテるだろ」

「俺が? いやいや、そんなわけないだろ」



 俺が誰にモテてるってんだ。

 モテるっていうのは、清澄や鈴乃のことを言うんだよ。俺なんかには縁遠い言葉だ。



「……こりゃ、苦労する訳だ」

「なんのことだ?」

「自分で考えな」



 なんか丸投げされた。

 よくわからないけど……ま、いいか。


 なんだかんだで教室に到着。

 まだ先生が来ていないから、クラスメイト達は思い思いの場所で雑談していた。



「日向、またな」

「おー」



 清澄は自分の席に向かい、俺も自分の席についた。


 鈴乃と夢葉は、いつもと同じメンバーで談笑中。

 ま、クラスでは鈴乃も話しかけてこれないし、俺は俺で授業の準備でも——。



「にょき」

「ん? ……何してんの、夢葉?」



 てか、いつの間にこっち来た。

 身長もちっちゃく、更にしゃがんでることで机の下から覗き込んで来る夢葉。

 まるで、他の誰かに見つからないようにしてるみたいだ。


 俺の予想は当たってるのか、シーッと指を立てている。



「静かにして。鈴ちゃんにばれないようにしてるんだから……!」

「は? なんで?」

「なんでも……!」



 夢葉はちょいちょいと手招きし、椅子に座るよう促した。

 取り合えず指示通りに席に座ると、夢葉が周囲を見渡して小声で話し掛けてきた。



「そ、その……しょーご、次の休みって時間ある、かな……?」

「次の休み?」



 何かあったかな。

 スケジュールアプリを開いて確認する。

 土曜日は明々後日だ。明日と明後日は鈴乃の世話をしなきゃならないけど、土曜日は特にないな。



「特にないぞ」

「そ、それなら、遊びに行かない? ……ダメかな?」



 頬を染め、不安そうな顔で見上げてくる夢葉。


 うーん。遊びに、か。

 本当なら土曜日も鈴乃の世話とかしなきゃならないんだけど。あいつの生活力って、皆無だからなぁ。

 本当、世話が焼ける。

 けど……たまには俺も遊びたいって欲もある。


 …………。



「ああ、いいよ」

「ほ、ほんと……!? しょーごって、いつもお休みは遊べなかったにに……!」

「ま、たまにはな。でもいい場所とかどこも知らないから、その辺見繕ってくれると助かる」

「ま、任せてっ。えへへ、やった……!」



 そんなに俺と遊びに行きたかったのか。

 こんなことなら、これからはもっと夢葉とも遊んで行こうかな。



「あ、それって他に誰か来るのか?」

「んーん、私としょーごだけだよ」

「おぉ、デートみたいだな。楽しみにしてるよ」

「でーと……デッ……!?!!??!?!!?」

「あ、おいっ……!」



 は、走って行っちまった。これからホームルームが始まるのに。

 はあ……先生にはうまく言っておいてやろう。



   ◆



「ねーねー正吾。夢葉と何かあった?」



 放課後。いつも通り鈴乃にお菓子を振舞っていると、鈴乃がジト目でそんなこと言って来た。

まあ、朝のあの奇行を見られてたら、俺が原因だってわかるか。



「まあ、次の土曜日に一緒に遊びに行く約束をしただけだ」

「え……遊びに!? 夢葉と!?」

「ああ。俺も夢葉とはほとんど遊んだことないからな。あ、悪いけど土曜日のお菓子とご飯は、金曜日に作り置きしておくから」



 木曜日に材料を買いに行かないとな。今ある材料だと、ちょっと足りなそうだし。



「土曜の昼はナポリタンで、夜はハンバーグを作る予定だから、楽しみにしててくれ」

「…………」

「……鈴乃? どうした?」

「……なんでもない」



 むっすーーーーーーー。あれ、めっちゃ不機嫌? なんで?

 ……あ、そうか。夢葉は鈴乃の友達だもんな。それが俺と遊びに行くって、ちょっと嫌な感じなんだろう。



「ごめんな、鈴乃。土曜日だけだから、許してほしい」

「むぅ……わかったよ」

「ありがとう」



 さらっと鈴乃の頭を撫で、土曜日のことを考える。

 高校に上がってから、友達と初めての外出だ。否が応でもテンションが上がるな。



【あとがき】

 作者からのお願い。

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 ☆☆☆→★★★


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