4.いつか

 3月

 俺はあの後、クラスにはほとんど行かず、保健室登校をしている。親が多分そうしたんだと思う。ちなみに妃奈も同じみたいだった。


 ということで今日は二人で図書室にいた。


「妃奈はさ、なんか春休みすることあんの?」

「ねえ開飛くん」

「ん?」

「私、検査入院することになった」

「え……」

「まあ、なんもないと思うけどね」

「そうだね」

「開飛くん、勉強教えに来てよ」

「え、あ、いいの? 行っても」

「うん。暇だし」

「じゃあ、行く。いつから?」

「春休みになってから」

「わかった」


 翌週

 春休みになり、俺は妃奈に会いに行った。


 教えてもらった病室に入る。


「開飛くん」

「よう、妃奈」

「開飛くん聞いてー」

「ん?」

「なんもなかったー」

「おーよかったじゃん」

「うん!」

 ほんとよかった。


 俺は妃奈に勉強を教えて帰った。


 妃奈は出来ないとか言いつつ出来てしまうような結構な優等生って感じがした。



 約2週間後

 春休み明けの始業式。俺たちは始業式には参加できないなら職員室に来いって言われたから職員室に来ていた。

 もう中学二年生になったんだ……


 職員室に誰か他の生徒がいた。


「転校生かな」


 制服が違うから多分転校生。まあ、俺たちも制服じゃないけど。


 どうせあの子はみんなにちやほやされて、友達できて、人生楽しいんだろうな……あんな風になれたらよかったのにな……


「あんな風に普通に暮らせたらよかったんだけどね」

 妃奈は俺が思ってたことをそっくりそのまま言った。

「そうだな。まあ、いつか、普通になれるよ」

「そうだね……いつか」


 いつか……

 そのいつかが来ればいいんだけどね。

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