緑星の賢者 ~幼馴染を寝取られた賢者は、気楽な貴族に転生してハーレムを作ります!~

軽井広💞クールな女神様 漫画①3/12

零章 七賢者たちの時代

第1話 オルレアンの七賢者

「新国王ユーグ陛下万歳! オルレアン王国万歳!」


 熱狂的な歓声が、王都の大聖堂のなかに響き渡った。

 聖堂には500人を超える貴族たちが列席し、オルレアン王国の新たな国王の誕生を祝福している。 


 教会暦1429年。 

 魔王との百年続いた戦争は、終わりを迎えた。

 オルレアン王国の王子ユーグ、そしてその仲間の七賢者が魔王を討ち果たしたのだ。


 オルレアン王国は大陸西部にあり、広大かつ豊かな国だった。

 碧い海と雄大な山々に囲まれていて、収穫の時期ともなれば、村々の麦畑が金色の絨毯のように輝く。


 そんなオルレアン王国に目をつけたのが、海の向こうの魔王だった。

 およそ百年前、魔王とその配下の魔族はオルレアン王国に大々的に侵攻。


 王国は善戦したが、魔王の持つ圧倒的な力の前に、王都は陥落した。


 王子ユーグが生まれたのは、そんな絶望的な状況のなかだった。

 ユーグが10歳のときに、父である王と身重の王妃も魔族に捕らわれ、惨殺された。


 同じようにユーグも処刑されるはずだった。

 

 ところが、そうはならなかった。

 人間の大魔法使いデュ・ゲクランの手で救出されたのだ。


 王国の正統な後継者として、ユーグは人々の希望の星となった。

 ユーグは幼いころより聡明であり、デュ・ゲクランの教えを受け、その天才的な魔法の才能を開花させていく。

 

 それでも、ユーグが一人なら、魔王に抗うことはできなかっただろう。

 だが、デュ・ゲクランには六人の少年少女の弟子がいて、彼ら彼女らがユーグの仲間となったのだ。


 ユーグと六人の仲間は魔法を極め、いつしか「オルレアンの七賢者」と呼ばれるようになる。

 そして、七賢者は多くの強大な魔族を撃ち破り、ついに魔王の撃滅に成功して、王国を解放した。


 今日、そのユーグがオルレアンの新国王に正式に即位する。


「いよいよだね、レノ」


 隣の少女が、僕に話しかける。

 僕は彼女のほうを振り向いた。


 くすっ、と女の子は笑い、黄金色の瞳で僕を見つめた。


 輝くような金色の髪を長く伸ばした美しい少女だ。

 素晴らしい装飾の施された碧いドレスに身を包んでいて、この子の身分の高さを強調していた。


「新国王ユーグ一世の誕生、か」


 僕は返事の代わりに、短く事実をつぶやいた。

 そして、僕は周りを見回した。

 

 僕が立っているのは、即位式の儀式場のなかでも最前列だ。

 周りにいるのは王族や名門貴族ばかりで、少し片身が狭い。


 新国王の即位式に僕が参列しているのは、僕も貴族だからだ。

 といっても、僕は生まれながの貴族というわけじゃない。


 ノアイユ大公レノというのが、僕の正式な名乗りだ。

 ただ、ほとんどの人は僕のことをそうは呼ばない。

 

 王国のほとんどの人にとって、僕は貴族ではなく賢者として記憶されている。


 緑星の賢者レノ。

 魔王を倒した七賢者の序列第二位。


 それが僕のもう一つの称号だ。


 僕は平凡な商人の息子だったが、ユーグの仲間となり、魔王討伐の功績で貴族になった。

 つまり、成り上がり者なのだ。

 

 ふふっ、と隣の少女が笑う。

 そして、俺の耳元に小さな赤い唇を近づけ、ささやきかける。


「レノのことを成り上がり者だなんていうやつがいたら、わたしもユーグも許さないんだから」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど、エミリは生粋の貴族だからね。それにいずれは王妃様だ」


「もう。そんなふうにすぐ皮肉を言うのはダメだよ? レノはわたしとユーグの大事な仲間なんだから」


 目の前の子はエミリという名で、リール公爵という名門貴族の娘だった。

 ただ、エミリの育ての親は別の人物だ。


 エミリも大魔法使いデュ・ゲクランに育てられ、そして七賢者となった一人なのだ。


 僕とエミリは五歳の頃から一緒に育った。

 身分に違いはあっても、二人とも戦争で両親を失った犠牲者だった。


 言ってみれば、幼馴染なのだ。

 デュ・ゲクランの弟子として引き取られたのは、僕とエミリが最初だった。

 他の七賢者は後から加わり、ユーグが一番最後だった。

 

 といっても、ユーグとの付き合いも十分に長い。


 だから、ユーグが国王になるというのも、感慨深いものがある。

 大魔法使いのもとで過酷な修行を受け、そして、魔王討伐の旅をした仲間でもある。

 

 ユーグはまだ18歳になったばかりだ。

 けれど、聖堂の壇上のユーグには威厳があった。


 銀色の髪に病的なほど白い肌という外見は中性的な印象だが、その端正な顔には何者も恐れない意志の強さが現れていた。


 大司教がユーグにオルレアンの王冠を授け、そしてその頭に聖油を注いだ。

 わっ、とふたたび歓声が起きる。


 ついにオルレアンには王が戻った。

 魔王のいない平和な世が始まる。


 誰もが希望に胸を膨らませ、喜びを分かち合っている。


 もちろん、僕だってそうだ。

 身分の違いこそあっても、ユーグは親友だった。


 ただ……他の人たちと違って、素直に喜べない理由がある。

 エミリをちらりと見ると、彼女は「なあに?」と言って僕に微笑みかけた。


 金蘭の賢者エミリは、新王ユーグの恋人であり、婚約者だ。

 今はまだ臣下の席についているけれど、明後日にはユーグと正式な婚姻を結ぶ。


 エミリがユーグを選んだのは当然だ。

 ユーグは容姿も優れていたし、人望もある。

 明るい性格でいつも周囲を笑わせていたし、なによりこの国の王子だ。

 そして、規格外の魔法の力を誇っていた。

 

 ただ、幼い頃のエミリは僕と仲が良かった。

 大人になったらレノのお嫁さんになるの、とエミリは言ってくれて、子どものときのこととはいえ、嬉しかった記憶がある。


 けれど、ユーグの登場が、そんな状況を変えた。

 十歳のとき、ユーグは僕らの仲間となった。


 初めてユーグと会ったとき、僕はユーグに圧倒されそうになった。

 同い年なのに、その魅力と存在感は規格外だったのだ。


 そして、僕の隣のエミリは顔を赤くして、ユーグのことを見つめていた。

 たぶん、そのときから、エミリはユーグのことが気になっていたのだと思う。


 成長するにつれて、エミリはますますユーグに惹かれていったようだった。エミリはいつもユーグの後ろをついてまわるようになった。


 王子であるユーグと、美しく魅力的な少女だったエミリは仲間のあいだでも特別な存在だったから、いつしか二人が一緒にいることは当然のように受け止められていた。 


 エミリのことが好きだった僕は、それを見ていることしかできなかった。

 

 いや、正確には何もしなかったわけじゃない。

 エミリは変わらず友人として親しく僕に接してくれていたし、そういう意味ではチャンスが皆無とというわけでもなかった。


 僕はエミリのユーグに対する恋心を知った上で、なんとかエミリを振り向かせようとした。

 でも、ダメだった。


 血筋でも、人間的魅力でも、僕はユーグに敵わない。

 ただ一つ、魔法の実力だけは、十四歳ぐらいまでは僕とユーグで拮抗していた。


 デュ・ゲクランの七人の弟子のなかでも、僕とユーグは頭一つ抜けた存在だった。

 ユーグは魔法の天才だったけれど、僕も神童だったのだ。

 それに、ユーグよりずっと早くから魔法の訓練をしていたという強みもある。


 エミリも「ユーグとレノはすごいよね」と言って、僕のことも尊敬する目で見てくれた。

 僕とユーグは互いをライバルだとみなし、競い合った。


 だが、やがて結果は明らかになった。

 ユーグのほうが魔法の才能でも優れている、と。


 理由は一つ。

 影の深さが違ったのだ。


 あらゆる物体は、陽の光のもとで影を持つ。

 そして、人にとっての影は、自らの存在の本質を示し、魔力の源となる。


 影と向き合い、その存在を理解することこそが魔術だ。

 だから、魔術の才能は、その人の影に左右される。


 ユーグの影は、大魔法使いデュ・ゲクランにも底が見えないほど、深く昏かったのだ。


 しだいにユーグと僕の実力は開いていった。

 僕のほうが五年も長く魔法の修行をしているのに、ユーグは楽々と僕の上を行くのだ。

 やがて僕はユーグに追いつけないと悟った。

 そして、同じ頃、ユーグはエミリの告白を受け入れ、恋人同士になった。


 魔王討伐の旅のあいだも、エミリはユーグに甘え、ユーグもエミリを大事に扱っていた。

 相思相愛の二人を見るのは、僕にとっては辛いことだった。


 古き世の七賢者の称号を継いだ後も、序列第一位は銀月の賢者ユーグで、僕の賢者としての序列は二番目だった。


 もしユーグがいなければ。

 最強の賢者の称号も、エミリのこともすべて手に入れられたんだろうか。


 ユーグを除けば、客観的に見ても、僕は他の賢者の遥かに上を行く。

 つまり、ユーグがいなければ、魔王討伐の名誉はもちろん、この王国の支配権すら握ろうと思えば握れたんじゃないだろうか。


 そこまで考えて、僕は首を横に振った。


 僕は大公という最も高い爵位を与えられ、王を守護する聖堂騎士団の団長となった。

 商人の子には、身に余る栄誉だ。


 儀式は終わり、国王ユーグは壇上から降りた。

 いつの間にか、エミリがユーグの方へと駆け寄っていって、彼に抱きついた。


 ユーグはちょっと困ったように微笑み、けれど、エミリの小さな体をそっと抱き寄せて、キスをした。


 僕は目をそらし、そしてその場を立ち去った。

 行こう。


 僕には国王ユーグと、王妃エミリに仕える臣下として、王国を支える責務がある。









<あとがき>

ハーレム・オブ・ハーレムな作品ですっ!


また、似たような異世界ものの新作も書いています! 異世界で美少女皇女様に求婚されて、彼女たちを妊娠させて幸せにしていく物語です!


タイトル:異世界に転移したら、美少女皇女と結婚して皇帝になりました。のんびりハーレム生活を楽しみます 

キャッチコピー:可愛い皇女様やメイドの子たちを妊娠させることが、俺の仕事でした

URL:https://kakuyomu.jp/works/16816927860338602396


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