サブカルギルド 17

 満腹になって満足して、二人で部屋に戻るとシロが侵入していた。

「あ、おかえりー。」

「お帰りじゃねぇよ!!なんでいるんだよ。」

「開けたから。」

 見せてきたのは針金。いつの間にピッキング技術身に着けたんだ?

「それで、どうだったの?光里ちゃん。」

 どういう質問なのか聞いてみようと思ったけれど、俺が口を動かすより早く、後ろから光里に抱き着かれた。

 え?どういうこと?めっちゃうれしいけどどういう事?

「ははー、なるほどねぇ~。これからも頑張ってねぇ~。」

 と、ニヤニヤしながら去っていくシロ。視界の端にギリギリ見えた光里の耳は真っ赤だった。


 しばらくしてから、光里に説明を求めたけれど、「ちょっと相談してたことがあって。」と軽くはぐらかされてしまった。

 言いたくないならいいか。

 それからクートから連絡が来た。

『うちの嫁がすまん。そんで一緒にキャンプ行きたいとか言ってるんだけど、できるか?できるなら食料の買い出しは全部俺が出すから。』

 金銭的に頼りがいがありすぎる・・・。

 光里に聞いてみると、そのつもりで言った。とのことなので、ダブルデートキャンプとなる。楽しくなりそうだ。


先にできる限りの確認をして、明日買うものを決めておく。

 寝袋を買わなければならないが、行く場所を聞いても「お楽しみね。」と笑顔で言われてしまうのだから仕方ない。光里に選んでもらう事になった。

 他にもいくつか挙げて行ったが、どれも揃っていて。どこまでやる気だったんだ。と呆れる反面、正直助かるとも思っていた。

 「明日もずっといるから」という理由で、今日はお開きとなった。あくまで建前で、本当は荷造りのためだけれど。

 光里が帰ってからは、いつも通り小説を書いていた。が。いつも通りがあだとなった。

 気が付いたら午前1時を回っていた。本当にアホなんじゃないかな?

 さっさと寝る支度をして、眠りに落ちたのは1時間後だった。




 体をゆすられる。柔らかい手と優しいゆすり方・・・。心地がいい。もう三度寝位したいな・・・

 体を起こす。ダメに決まってるだろ寝坊したんだよ分かれよ。

「やっと起きた。」

 不満そうに俺のことを見る光里。見た限り準備万端と言ったところか。

「すまん。気付いたら遅くまで書いてて・・・。」

「そんなの見ればわかるよ。さっさと支度して行くよ!」

 テーブルを見ると作ってくれたのか、朝食がある。そして玄関の方には見慣れない巨大荷物たちが・・・。

「あれ、なに?」

「あー、支度してる間に増えちゃって・・・。キャリーカートで持ってきたんだぁ。」

 俺が運ばなきゃな。なんて変な責任感を感じつつ、ありがたく朝食を頂いて手早く支度をする。

 支度を終えると昼前みたいな時間で、クート達から食料と場所の確保と送れたら先に始めちゃうぞ。という連絡が来る。

「お待たせ。待たせてごめんね。」

「別にいいけど、ごめんよりありがとうの方がいいな。」

 よくわからないけれど、それならそうなのだろう。

「うん、待ってくれてありがとう。」

「どういたしまして。」

 何がうれしかったのかわからないけれど、嬉しそうな表情だから、深く考えるのはやめた。


 キャリーカートを持とうとしたら、光里に止められたけれど、「むしろここまで準備してくれたんだから。」と言ったら持たせてくれた。

 先に、以前来たことのあるデパートに寄って、足りなかったものを準備する。

 購入したのは、モバイルバッテリーと軍手程度だったのですぐに終わった。

 早めにバスに乗り、目的地の最寄りのバス停まで向かい、降りてからしばらく歩いて、やっとの思いで到着した。

初夏に影なしの坂道を大荷物で歩くのはきつすぎる・・・。

 偶然日陰を見つけては水分補給の休憩をとっていたので、熱中症などの問題は無い。・・・と思いたい。

「おー、やっと来たかぁ!」

 と、クートが言っているが、そんなもの気にならない。隣のバーベキュー台が火を登らせているのだ。圧巻だが危ない。

「先にそれどうにかしたら?」

「いやぁ、炭入れすぎちゃってさ。」

「シロが?」

「そう。」

 ところでこの火の原因が居ない。

「シロはテントで反省中。」

「あぁ・・・。」

 良かれと思ってダメなことしちゃうもんな・・・。

「クートさん、シロちゃんのこと怒ったんですか?」

 なんだろう、声音は平らなのに棘を感じる。

「いいや、いつも自分で反省するんだよ。だから俺が怒る必要なんてないの。本当にダメなことなら自分からやらないし、気付けなかったら大体ツッチーが止めるし。」

 割とそういうことを言われるのだろうか、その説明に慣れを感じる。

「あ、そうなんだ、ごめんなさい。」

 あ、しゅんとしてる。可愛い。

「気にしないで、割と言われるから。」

 やっぱり言われるのか。

「あとツッチーは思ってること言わないと黙るよね。」

 そうね。

「心の中で返事すな。」

「悪かった。」

 とはいえ、これではBBQができない。

「そうだなぁ・・・。」

 と、クートがニヤニヤする。察した俺は視界に入っていた竹串とマシュマロに手を伸ばす。

「んじゃ、マシュマロ焼くしかないな!!」

 クートが大声でそう言うと、シロがテントから顔だけ出してこちらの様子を見る。

「・・・いいの?」

「当たり前だろ。」

 あー、尊い。助かる。

「反省できるのは美点だけど、責任感じすぎるのは直した方がいいかもな。」

 と、頭を撫でながら。

「ん、頑張る。」

 まぁ無理なんだろうけど。こういうやり取りがずっと続くなら、私は一向にかまわん。

 光里がこっそりと、

「いいね、こういうの。」

「わかる。いいよね。」

 と、二人でマンガ読んでるオタクみたいになりつつ、竹串にマシュマロを刺す。

 二人のイチャイチャが済んでからマシュマロ付き竹串を渡す。

 受け取ってうれしそうにしてる二人を見るだけで、俺はもうお茶が飲みたい。

 竹串を光里に持ってもらおうと思ったのだが、光里も同じことを思ったのかこちらを向いていて、俺が竹串を受け取って、お茶を持ってきてもらったのだが、ペットボトル一つ。俺の分は無しか・・・。なんて思うのもつかの間、キャップを開けて、そのまま俺の口に近づけてくる。

「いや、さすがに飲みにくいと思う・・・。」

 片手に串を二つ持ち直してから、ペットボトルを受け取る。若干不満そうな顔をしているけれど、さすがにこぼすのはもったいないから・・・。

 内心言い訳をしつつ飲み、「ありがとう」と言いつつ返すと、迷いなくそのまま飲んだ。

 あー、あんまり気にしない感じかな?

 こころを強く持つために、そう思うようにしたのだが、光里の顔が赤い。明らかに照れている。

 照れるくらいならやらなくても・・・。

 とも思ったが、対抗心なのか、ただやってみたかっただけなのか。どちらにせよ。もう一組のバカップルにニヤニヤされているのには気づいていた。


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