新しい小説_01

オープニング

 やぁ、こんにちは。この小説を読んでくれてありがとう。人生における貴重な可処分時間を割いてこんな作品を読みに来るなんて、君はよっぽどの暇人か物好きなんだろう。今日はそんな物好きな君と、一つゲームをしたいと思うんだ。

 ……僕が誰かって? 誰でもいいだろ、そんなの。どうしても名前が欲しいなら、『代弁者』スピーカーとでも呼んでくれればいい。君が画面上で僕の足跡を辿っている姿を、その中から見ている者だよ。君の怪訝に眉根を寄せる顔も、全部知ってる。


 僕はこの小説の全てを、朝食の用意をするかのように動かせるんだよ。例えば……そうだな。こんな風に祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。たけき風に別のパラグラフを持ち込むことだってできるし、こん

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