私と死神さんの一週間

Magical

第1話 

時計の針が十二時を指している真夜中の病院、その中でただ一人病室の中で私は横たわっている。


私は生まれつき身体が弱かった。小学校の頃は何度も入退院を繰り返し、中学生になる頃にはもうほとんど学校に行けるような状態ではなくなっていた。その為、友達は一人もできず十六歳になる今までずっとひとりだった。


つい最近、両親が私の元にいる時間が伸びた。そして夜中には決まって母は涙を流していた。


そうなっている理由は何となくわかった。それはわたしがもう、そう長くはないということだろう。最近、投与する薬が増えたし、意識がはっきりとしている時間も前と比べて短くなってきた。


それを察してから、私は自分の死について考える時間が増えた。でもどう考えても実感が湧かなかった。実感は湧かなかったけれど、あるひとつの後悔が頭の中に出てきた。

「恋をしてみたかったな……」と……。



そんなことを思いだしてから一ヶ月、もう私は自分の力では動けなくなっていた。そして息苦しかった。


その為、誰もいなくなった夜中の病室が私は嫌いだった。


そしていつものように一人で病室のベッドの上に横になっていた時、窓からひとつの淡い光が入り込んできた。そしてその光が私を照らした、すると息苦しさが一気になくなり、そして無意識に腕を動かし胸を抑えた。


「あれ…?苦しくない、動けるようになってる!!」


動けるようになった身体で、自分の力で立ち上がった。自分の力だけで立ったのはいつぶりだろう。


私はこの不思議な現象に戸惑っていた。

そして今度は、その光が私から一歩離れた所を照らし始めた。するとそこにひとつの影ができ始めそれがだんだんと人の姿へと変わっていった。


そして、「あれ?予想よりお若く、綺麗な方ですね。」そう私に言ってきた。


そして私は彼の顔を見た。

かっこいい……って言うかすごく綺麗な顔立ち。


そして私が彼に見とれていると、彼は私にこう告げた。


「あ、申し遅れました、わたしはあなた様、日向華凛《ひむかい かりん》様を御迎えに参った死神と申します」


……えっ?死神……?死神ってあの死神……?

「あ、あの……死神ってあの死者の前に現れるって言う……」


「ええ、その死神で間違いありません。」


その言葉を聞いて私は驚きはしなかった。ただ、とうとう死んじゃうんだなとそれだけ思った。


こんな私の様子を見て彼はこう言った

「あれ……?私のことを嘘だとも思わず、冷静でいられている……。ショックではないんですか……?」


いかにも不思議そうに聞いてきた。たしかに、私みたいな人は珍しいのかもしれない。そう思った。

「元々、小さい頃からこんな身体だったし、最近の自分の体感からそろそろかなとは思っていたから。それにさっきまですごく苦しくてもう何年も歩けなかったような身体が嘘のようにはたらいたんだもの、信じないわけないでしょ!」


「そ、そうですか……。ご満足いただけたなら何よりです。」

私の言葉に一瞬、動揺していたようだったけど、後半はまた、元のように戻った。


「それで私は、今日死ぬの……?」

死神が来たのだからもうすぐに向かわなければならないのかなと思った。


でも、そうではなかった。

「いえ、正式な御迎えに伺うのは、一週間後のこの時間、0時42分です。」


「なら、なんで一週間前の今日に……?」


そしたら彼はこう答えた。

「私たち死神の仕事は魂を送るべきところへ誘うだけでなく、亡くなる前に出来るだけの後悔を払拭するためのお手伝いをすることも仕事として含まれています。なので、御迎えに伺う一週間前に現れた次第です。では、早速ですがあなたの叶えたい望みはありますか?」


「叶えたい望み……」

叶えたいといっても、正直思いつかなかった。そこで、私は彼の顔を見た。


そして、思いついた。

「私が死ぬまでの一週間、私の彼氏になってもらえませんか……?」


あ〜!!!!!言っちゃった!!絶対、おかしい人だと思われちゃったよ~~!!


「なるほど、わかりました。」


え……?意外とあっさり……

彼は驚きもせず、あっさりと私の願いを聞き入れてくれた。


「ですが、彼氏ということですと、一体何をすれば良いのでしょうか……?」


そこで私は彼に、誰も病室からいなくなったこれくらいの時間に私の元に来て話し相手になって欲しいと、いうことを伝えた。


「なるほど、そういうことですか。理解致しました。」


それと私は一番気になっていたことを彼に伝えた。

「あの……出来れば、彼氏なんだし口調を変えてくれたらな〜って、あと私のことも名前で呼んで欲しいです……。」


少しでも付き合っている感じを出したからったからなのかわからないけど、この呼び方は他人行儀すぎるから正直に伝えた。


「あっ、すみません。つい癖で……、たしかにこの感じは不自然でしたよね……。では……」


そう言って彼は目を閉じ、少し表情がほぐれ再び目を開けた。


「じゃあ、こんな感じでいいかな……?華凛。」


初めて、家族以外の人から名前を呼び捨てで呼ばれた。なんというか少し恥ずかしい……。


っていうか死神さん普通にイケメンだから、何となく嬉しいの方が勝っているのかも……。


「えっと……、なら私は死神さんのことをなんて呼べばいい?」


こっちが名前で呼ばれているんだから私も名前で呼びたい!!


「僕は……、たしかうっすらと……湊音《みなと》……そう、湊音だよ。」


彼はまるで久しぶりに思い出したかのように自分の名前を口にした。


「湊音くんか……、よろしくね!!湊音くん!!」

でも私はそんなこと気にしなかった、何より初めて彼氏ができたことがすごく嬉しくて、心が飛び跳ねていた。


「うん、よろしく、華凛。」


これからの残り一週間、ちゃんと悔いのないように生きたいな~……。





〜続く〜

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