第2話 ラプンツェル

第1話 ラプンツェル①

 むかしむかしのお話です。


 魔法が使えたり、お城には王子様が、森には魔女などがいた頃のお話です。


 ある森の中に、ラプンツェルという、それはそれは綺麗な若い女性が、とある高い塔の上に住んでいました。


 この女性は、初めの頃は、その長い金髪を、魔女がラプンツェルと呼んだら塔の窓から垂らして、魔女を塔の中に入れていました。


 ラプンツェルは、塔から出られません。

 そのため、魔女が塔を出入りして、ラプンツェルのお世話をしていたのです。


 なぜ出られないかは、そのお世話をしている魔女さえも良く知りませんでした。

 そして、一階の扉も閉まったまま、開けられないのは、なぜかも知りませんでした。


 ただ、魔女は、怖い魔王の命令を実行するだけです。


「もう、良いでしょう。魔女が髪の毛を手繰って登ってくるのは、とても首が疲れて、頭痛や肩凝りが酷くなるのよね。そして、これからは・・うふふふ」


 そう呟いた時、塔の下から声が聞こえました。

「ラプンツェル、ラプンツェル!貴女の綺麗な髪を垂らしておくれ」


 魔女がやってきたのでした。


 ラプンツェルは髪の毛を垂らしました。


 そして魔女がそろそろ手が届くかというくらいに上った所で、髪の毛をバッサリと切ったのでした。


 魔女は、下に落ちて死にました。

 亡骸は、光り輝くと魔王城へと転移していきました。


 それから幾年経ったことでしょう?


 この森は、誰が言うようになったのか、塔の森と呼ばれるようになっていました。

 ですが、実際に塔を見た人はほとんどいませんでした。

 ただ、その塔を見ようと思えば「ラプンツェル、ラプンツェル」と叫べば良いという噂と、そのラプンツェルというのは塔に住む絶世の美女であるという噂が人知れず伝わっているのでした。


 世の中には、絶世の美女とか、不思議な塔とかに興味を抱く人達は意外と多く居るものです。

 また、その森には希少な薬草や昆虫、小動物達がいるという事が、その道の人にはよく知られており、その点からも人が森に入ってくることはしばしばありました。


 そんな森の近くの集落に、エリーゼという、若くてとても元気な女性がいました。

 明るく朗らかな彼女は、決して美人ではありませんが、その愛嬌の良さと笑顔の可愛さで、村では人気者でした。


 エリーゼには、幼馴染で良い感じの仲のジョーという青年がいました。

 彼女は、ジョーがプロポーズをしてくれたら、いつでもお嫁に行くつもりでいました。


 そんなある時、ジョーは、一度でいいから森でラプンツェルと叫んでみたいとエリーゼに言うのでした。


「そんなのダメ。あなたも知ってるでしょう?この村には、塔の森ではラプンツェルと叫んではいけないってルールがあるってことを」


「そんなの、もちろん、知ってるよ。でも、よくここにやって来る人が居るけど、迷信だって、言ってたよ。ラプンツェルと叫んでも何も起こらなかったってさ。」


「ダメなものはダメよ。大婆おおばあ様に叱られるわよ。大婆様は、そのラプンツェルを見た人なのは、知ってるでしょう。その大婆様がダメって言ってるんだから、ヤバい事なのよ、きっと。だいたい、もし居たら、そんなに長生きするラプンツェルって、恐ろしい魔女に違いないわ。だから」


「だからだよ。大婆様は見たって、帰って来れたんだからさ。それに、オレは村一番の強い男だし、女の魔女なんかが出てもへっちゃらさ」


「なによ、わたし、あなたの身に何かあったらと思うと・・・」


「大丈夫さ。それじゃあ、一緒に行こう。そして、帰ってきたら・・その・・結婚しよう!・・・ダメかな?」


「えっ!・・ほんとう?うれしい!!」


 こうして、二人は翌日準備を整えると、誰にも告げずに、森へと行くのでした。



つづく


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