第8話 やつは知っている
このところ子供たち――高校生以下の連中だ――が複雑な表情で昼日中の街を出歩いているのを見かけるようになった。
連続殺人が起きているから、子供たちは休校になっているのだ。休校ももう二週目に入っているらしい。一週目は事件が怖いし大人しく言う事を聞いていたのだろう。しかし二週目を迎えれば家にいるのも退屈になるしすぐに魔手が伸びるわけでもない。
そういう訳で、ティーンの子供たちがあちこちをうろつくようになっていたのだ。
そんな事をあれやこれやと考察している俺は、そんな子供たちとは無関係だ。俺は今大学生で、弟妹もいない。従って彼らの休校とは関係ない。
連続殺人の被害者は性別こそ判らないが、十代の子供である事だけは判っていた。
※
「ああ、やっぱりこっちの地元は子供が多いなぁ」
「ほら、事件の影響があってずっと休校なんだ。それで暇を持て余しているんだよ」
夕暮れどき。俺は同じ学科の悪友たちと共に近所のフードコートにたむろしていた。俺たちが座るテーブルの近辺は、やはり十代の少年少女が笑いさざめきながら陣取っているのは言うまでもない。
「ああ、あの事件は物騒だよなぁ……」
ずれた眼鏡の位置を調整しながら、金城は呟いた。
「ほら、うちさ妹がいるでしょ。事件現場からは離れてるし休校もないけれど、すっかり怯え切っているみたいでさ……しかも怖がっているのを隠そうとするから余計に……」
「それならさ、妹さんには大丈夫だって言っておきなよ」
ここにはいない妹を案じる金城に声をかけたのはひょうきん者の辰島だった。
「あの事件の被害者って概ね少年、男子ばっかりだからさ。女子は狙われないよ」
「あ、そうなの……ありがとう。多分妹もちょっと安心するかな」
「ははは……お役に立ててうれしいよ。あ、ちょっとトイレ行ってくるわ」
辰島はおどけた調子で手を振り、そのまま立ち上がった。視界の端に違和感を覚える。ふと見れば、隣に座る佐々木が小刻みに震えていた。顔色が悪い。
どうした佐々木。尋ねると、彼は唇を震わせながら言葉を紡いだ。
「あのさ……警察に連絡したほうが良いと思うんだ」
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