第3話 入学式

 入学式の会場である体育館に向かった俺は指定されていた席に座り、始まるのをじっと待っていた。

 周りの席に段々と人が座り、全員が席に着いた時校長先生が出てきて入学式が開始された。

 現れたのは70歳を超えるだろう髭を長く伸ばしたお爺ちゃんだった。だが、いくら年老いたといってもこの学縁の校長先生はSSランクハンターだ。SSランクのハンターは国家権力級の戦力であり、この日本では絶大な影響があるのだ。


「皆さま本日はお忙しい中ご足労頂き誠にありがとうございます。今年入学されました新一年生の皆さん、ここにいる人たちは皆良きライバルであり、友達です。なので、一緒に切磋琢磨せっさたくまして上を目指して下さい。あまり長いくても退屈でしょうからこれで私からの挨拶は終わりです。次の方後は頼んだぞ。生徒会長」

「はい」


 校長先生と言われた人の話が終わると、生徒会長と呼ばれた人がステージに上がった。

 ステージに上がったのは、雷門時桐花らいもんじきりか、二年生の生徒会長である。

 この生徒会長は二年生にして、生徒会長の座につけるほど優れた女性なのだ。

 彼女の校章は【ミスリル】であり、この学校のハンターランキング1位に位置している最強の人だ。

 この学園は学園ランキング制度というものがあり、順位が低い人は高い人に決闘を挑める権利が貰える。もちろん、両者の受諾がない限り決闘は開始されない。

 そして、受諾され決闘勝てばポイントというものが貰える。このポイントはお金としての機能もあり、さまざまな用途で使われている。


「……これで、私の挨拶は終わります」


 どうやら考えごとをしている最中に生徒会長の挨拶が終わったようだ。

 残りはこの学園の先生方からの挨拶だけのようだ。


 先生方の挨拶も終わると、水原先生が前に出てきて声を張り上げた。


「ここにいる人たちは私のクラスよ。今から教室に案内するから、みんなついてきてね」


 先生はそう言うと歩き出した。案内され連れてかれたのは、一年A組の教室だった。

 水原先生は生徒たちにどこでもいいから座るように言い、教壇きょうだんに立ち、自己紹介をした。


「私の名前は水原玲奈、22歳よ。好きに呼んでちょうだい。一応Sランクハンターよ」


 水原先生がSランクハンターだと知った生徒がざわめきだした。


「みんな静かに。これからこと学園の説明をするわ」


 そう言った途端とたん生徒たちは静かになり、水原先生の方へ視線を向けた。

 静かになったところ水原先生は、静かに周りを見渡して学園の説明を始めた。


「うーん、何から説明すれば良いかしらね……。そうだわ、何か聞きたいことある人いるかしら?」


 水原先生が聞いたら、生徒たちの何人かから手が上がった。


「じゃあ、そこの彼女」

「はい」


 指名されたのは、燃えるような赤髪を左右で縛り真っ赤な瞳を持つ美少女だ。

 彼女の名前は火野ひの花蓮かれんといい、未来では【獄炎】の二つ名を持つ。前回の学園生活では学園ランキング上位の実力があり、火の魔法を得意とする。


「これからすぐにダンジョンに潜ることは可能でしょうか?」


 花蓮は学園が終わったらすぐにダンジョンに潜るつもりなのだろうか。

 ダンジョンに入るには最低でも【銅】ランクの校章が必要なのだが、新入生が知るわけもないか。


「いいえ、あなたたちは最低でも銅ランクの校章がなければダンジョンに入ることはできないわ」

「それでは、どうすればダンジョンに入ることが可能になるのですか?」

「いい質問ですね。この学園での私たち教師の評価によりますね。この学園のテストの成績や模擬戦での評価、それにダンジョン探索の評価、最後に学園ランキングが良ければ校章のランクが上がりますよ」


 この学園では、今水原先生が言った通りの方法もあるが、今説明された中ではすぐにダンジョンに入る方法はないように見える。

 だが、実はもう一つの方法があるのだ。


「先生、本当にすぐに入る方法はないんですか?例えば、この学園の上級生に決闘を申し込み校章を賭ける……、とか」


 水原先生は俺の顔を見ると、一瞬驚いた顔をしたがすぐに切り替え質問に答えた。


「はい、可能ですよ。ですが、あまりオススメはしませんね。何故なら普通は勝てないのと、もう一つあります。えっと……では、火野さん分かりますか?」

「すいません、分からないです」

「それはですね、まず上級生の方々が決闘を受けないからですよ。これで大丈夫ですか?時崎さん」


 まあ、それは当たり前か。新入生にいきなり決闘を申し込まれて、受ける奴はいるかもしれないが、校章を賭けるバカはほとんどいないだろうからな。


「はい。教えていただきありがとうございます」

「では、他に質問がある人はいますか?」


 次々と生徒たちの質問に答えて、全員の質問に答え終わると、水原先生は最後に生徒たちを見渡して入学式初日は幕を閉じた。

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