四月一日 長崎の夜

【くまの】曰く、「もがみとくまのは双子の兄弟で、もがみが兄」とのことだ。


 確かに俺達は計画されたのも、予算が付いたのも、設計図は全く同じである。設計図が同じということは、それぞれの造船所の環境を原因に持つ優良不良を除けば、良い所も悪い所もすべて同じだ。しかし、起工は俺が一日早かったが、その後の進水も就役も【くまの】が早かった。俺はネームシップというだけで実質は弟なのだと思っている。

「双子で、俺が兄かって言われるとなんか違う気がするんだよ」

「それ、【くまの】に聞かれたら滅茶苦茶に怒られると思う」

「【のしろ】と同じく」

「うん、分かってる」

【くまの】の居ない長崎の夜。弟たちにそう零せば呆れたような顔で聞いてくれた。


【くまの】は弟なのだ。【くまの】がそう言うのだから。

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