二月二十二日 猫の日 あきづきとくまの

もう三月がすぐそこまで来ているというのによく冷える午前のこと、【道】の中の猫のたまり場に来てみれば、大きな子供が先に猫を撫でていた。

「あっ」

「あっ」

「……サボるのか、【くまの】?」

「……ちょびっとだけ」

もうすぐ就役前の地獄の訓練が始まる時間だというのに、こんなところで油を売っていていいはずがない。つつけば【くまの】は唇を尖らせて反抗的な返事をした。

「反抗期って感じだな、新造未就役め」

「みんな同じこと言うね」

「そらそうだ。見たまんまだからな」

俺は【くまの】の隣にしゃがみこんで別の懐っこい猫を伸ばしその腹を撫でる。

「猫、好きか?」

「ちょびっとだけね」

「そうか」

「抱いたら温いとこは好き」

「そうか」

少しの間一緒に猫を撫でていると、鯉の形をした【魚】が【くまの】の目の前にやってきた。【くまの】には可哀そうだが時間切れのようだ。

「【くまの】―!」

【もがみ】が逃げ出した弟を呼ぶ声が聞こえる。

「ほら反抗期二号が探してるぞ」

「あっちが一号だよ……またね」

【くまの】は残念そうに立ち上がると猫にだけ手を振って、【魚】と一緒に兄の居る方へとぼとぼ歩いて行った。

「生意気だなー」

猫は【あきづき】に返事をするように、ニャオンと鳴いた。

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