今日ノソライロ〜番外編

NAZUNA

第1話ターゲットその1

「みんなおはよう〜」

美晴が教室に入った途端、クラスメート達が気まずそうに俯く。

誰一人として美晴に口を聞いてはくれない、

その様子をサキ、正美、美香、加奈子が獣のように目を光らせ、美晴と口を聞いている者がいないか確認する。


誰一人として美晴と口を聞いていないのを確認するとサキ達はやたら嬉しそうにハイタッチを交わした。

それからサキが教室中に響くような大声で

「美晴さーアイツマジでウザイんだよね〜いい加減自分が嫌われている事に気が付かないかな〜。」

と言う。その言葉を聞いた美晴がピクリと顔を引き攣らせる。

すると正美がサキに負けない大声で美晴に対して

「さっさと死ねば?お前なんか生きているだけで公害なんだけど?」

その一言に美晴はその円な瞳に涙を溜めて俯く。それを見た加奈子が面白くて堪らないとでも言うようにケラケラと笑いながら

「コイツ泣いちゃってるんですけど〜マジで顔キモいんだけど〜お前ってさ、よくみんなにキモイ面晒せるよね〜」

と口にする。美晴はといえば、今にもその瞳から溢れ出しそうな涙を必死に堪えているらしい。


「は?泣いてんじゃねーよ?お前さー泣けば味方が現れるとでも思ってんのかよ、このクソぶりっ子女が。」

正美が美晴の肩まで伸びた黒髪を乱暴に掴む。美晴は「うっ」と小さな呻き声を出すが正美はお構い無し。

するとサキが可笑しそうに笑いながら

「無理無理!!泣いても味方なんか集まる訳ないじゃん!!て言うかこんなクソぶりっ子のブサイクなんか味方居なくて当然でしょ!!」

と叫ぶ。サキの一言に数人のクラスメートがクスリと笑う。

誰一人として美晴の味方にはならなかった。みんなしてサキ達の言いなり。みんなサキ達に逆らったらどうなるのか分かっているから敢えていじめを見て見ぬふり。


時を遡ること数日前、美晴は図書館に行こうと廊下を歩いていた時。

廊下の壁に貼り付けられポスターが気になって余所見をしてしまい、目の前に居たサキにぶつかってしまったのだ。


「わたしが余所見してたから。本当にごめんね、大丈夫、サキちゃん?」

美晴は痛そうに身体を擦るサキにすかさず謝った。

しかし、サキはそれで機嫌を損ねたらしく

「は?このアタシにぶつかっておいて謝るだけで許してもらえるとでも思ってんの?」

サキに脅された美晴はどうしていいか分からずにただただ怯えるのみ。

その様子を廊下で見ていた同級生達は怖くてただただ見ているだけしか出来なかった。

何故ならばサキは校内でも札付きのいじめっ子で周囲の大人から「あの子と関わっちゃダメよ」と言われるくらいだから。


しかもサキのバックには加奈子、正美、美香という取り巻きがいる。この3人もまたサキにつぎ、 酷いいじめっ子だと有名だった。

また、サキ3歳年上の颯太郎、玲於、正美にはサキと同じく3歳年上の和彦、快という兄が、美香には2歳年上の咲玖という兄が居る。

彼女らの兄は体格もごつい上に、中高と酷いいじめっ子で有名だったからだ。


サキ達に逆らえばどんな酷い目に遭わせられるか分からない。だからこそ関わらないのが1番だと周囲の者はみんなそう思っていた。


そしてとある休み時間のこと、サキは取り巻きの正美、加奈子、美香に対して

「美晴ってさ〜マジでウザくない?アタシってああいうぶりっ子嫌いなんだよね。」

それを聞いていた正美、美香、加奈子はニタリと不気味な笑みを浮かべて頷く。

その日から美晴に対するいじめが始まったのだ。


ある朝学校に来て自分の席に向かうなり美晴は唖然とした。

何故ならば机には油性マジックで「死ねば?」「クソぶりっ子女」「学校来んなブス」と数々の悪口が書かれていたから。

犯人はサキ達に違いない。その証拠にサキ達は唖然とする美晴をみて教室の隅でクスクス笑っているからだ。

美晴は泣きそうになりながらも何とか椅子に座る。しかし、椅子に座った途端に刺すような痛みがお尻を襲ってくる。


「痛い、痛いよ…。」

痛さのあまり苦しそうな声を上げる美晴を見てサキ達は更に笑い声を上げた。

実は美晴が学校に来る前にサキ達は椅子に画鋲をばら撒いていた。

まさか椅子に画鋲がばら撒かれているとは知らずに座ってしまい、美晴のおしりには数々の画鋲が刺さっていたのだ。


痛さにのたうち回る美晴を見ながらサキ達は悪魔のような笑みを浮かべる。


それからも美晴に対するいじめは徐々に激化していったのだ…。

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