第21話 シオンとカサンドラ2

俺たちは赤ワインとステーキを食べながら、今後の方針を話しあう。てかこのステーキ柔らかいな。むちゃくちゃ柔らかいんだけど……



「それでオークたちだけどどれくらいの戦力かしらね」

「そうだなぁ、ギフト持ちのオークが二匹か……シュバインの方は確かに強いけど、もう一体のオークのギフトが気になるね……」

「私のギフトで、未来を視れればいいんだけど……こっちは自分の意思では制御できないのよね……でも、洞窟で出会ったオークはかなりの大規模でいたわよね。たぶん命令系のギフトじゃないかしら」



 オークは基本的に3体か4体程度で行動をする。そちらの方が、獲物をみつけたとき喧嘩になりにくいのと、知能が低いからか、団体行動が苦手なのだ。だが、洞窟では10体以上で行動をしていた。これは異常な事である。その報告があったからこそ、冒険者ギルドも追加で調査をしたのもあるだろう。



「命令系ってなると、あとは、オークのリーダーの知能次第でどれくらい厄介かかわるな……あいつらはなんであんな大人数でいたんだろう? 何かしらの作業をしていたのかもしれないが想像がつかないな……」

「ええ、そうね……でも、何らかの作戦を練っているのかもしれないわ。苦戦は覚悟しておいた方がいいかもしれないわね」



 そういうと彼女は、ワインに口をつけてから街を見下ろした。建物からあふれる光がまぶしい。この光の数だけ人々が生きているのだ。



「もしも、オークたちがダンジョンから出てきたらこの街が襲撃される可能性もあるのよね……」

「ああ、そうだな、だから俺はなんとしてでも守りたい。厄介な依頼になりそうだけど、カサンドラにも力を貸してほしいと思う」

「当たり前でしょう、私はあなたの相棒ですもの。クエストの報酬でまたここに来ましょう。それに……私もこの街が好きになれそうだから」


 そういうと、彼女は心強くうなづいて微笑んだ。そのあとは二人でオーク対策について話し合った。相手の戦力は未知数だが俺達ならなんとかできることをやるのだ。とりあえず、俺達は明日ギルドに寄った後に、ダンジョンに変わったことがないかライムに聞きにいくことになった。



 高台にある店を出た俺たちは、街の夜景を見ながら帰路を進む。人々の家の明かりが輝いていて幻想的な風景を生み出している。酔った体を冷たい風が冷ましてくれる。隣を歩くカサンドラが楽しそうにしゃべる。



「私ね、もう、こんなふうに普通の服を着たり、誰かと笑いあえるなんて無理だと思ってたから、今日はすごい嬉しかったわ。ありがとう。こんなプレゼントももらっちゃったし、頑張らないとね。これからもよろしくね」



 彼女はそういいながら、髪飾りを愛おしそうになでながらクルクルと回る。その姿はまるで、舞踏会のようで絵になっていたけれどスカートがフワリとして目の毒である。酔っているのか上機嫌だ。



「ああ、その髪飾りを気に入ってくれたんだな。俺もなんか嬉しいよ。でもさここって風が強いから……」

「え……?きゃあぁぁ」



 その時ちょうどきた突風が彼女のスカートをまくり上げる。その時思ったことは、ああ、下着は髪の毛と違って赤じゃないんだなって思ったのと、Bクラスソロの冒険者も突然の風には対応できないんだなっていうのと、エロい気持ちというよりも、いきなりすぎてどう反応すればいいのかわからないってことだった。カサンドラはスカートを押さえつけれながら羞恥のためか目に涙をためてこちらを睨むように口を開いた。



「ねぇ……見た?」

「いや、見てない。何にもみてないぞ!! いや、本当に!! ちょうど目にホコリが入ってさ。あー目が痛い」

「よかった、実は今日のは使い古しのパンツだったからみられたら恥ずかしくて……」

「え、結構新しそうだったよ?」

「シーオーン」



 カサンドラの地獄から響くような声で俺は自分の発言の失敗に気づいた。ゴゴゴという効果音が背後から現れそうな陰鬱な顔でカサンドラが睨んでくる。



「記憶をなくしなさい!!」

「理不尽だぁぁぁ!」


 その日夜の街で謎の爆発がおきて少し騒ぎになった。危うくオークと戦う前に負傷しそうになった。でもさ、俺悪くなくない?

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