第17話 緊急ミッション

緊急ミッション。それはクエストとは違い、ギルドからの冒険者を指名した依頼である。一般的にクエストは依頼主がいたり、ギルドが情報収集のためや、素材集めを、冒険者を指名しないで受けたいものが受ける形で行われる。


 だが緊急ミッションはその名の通り、緊急事態のみに、発令され、その期間はすべてのクエストが中止になる。そして普段のミッションと違い、ギルドに指名された人間は基本的にはその依頼を受けなければいけない。もしも、たいした事情もなく、拒否をすれば最悪ギルドからの除名もありえるのだ。

 もちろん、緊急ミッションに参加するのは全員というわけではない。この街のギルドにはAランクはいないため、BランクやCランクの上位は指名されるがその他は違う。

 C級下位やDランクの冒険者たちは自由参加という形になる。彼らの場合は、もちろん強制ではない。だが、ここで受けておけばギルドの覚えはよくなるのだ。彼らはターゲットと戦ったりはしないが、雑魚モンスターの退治や、探索などを担当することになる。

 そして、一番大事なことは緊急ミッションはギルドが街の脅威を感じた時にのみ発生する。俺も何年も冒険者をやっているが初めてである。それだけ、ギルドは今回のオークを危険視しているということだ。



「ダンジョンのオークはそんなにやばいんですか?」

「ええ……シオンさんの報告の後、何人かの冒険者にも探索をお願いしたのですが、ダンジョン内のオークの戦力がどんどん増していて、放っておいたら手を付けられなくなるかもしれないとのことでした。そして、ギフト持ちのオークは周りのオークたちの能力を上げる力を持っている可能性があります」

「オークキングの再来ってわけね……それはまずいわね……」

「はい、さすがにオークキングほど強力ではないと思いますが、警戒をするには越したことはないでしょう。今、探索が得意な冒険者に、最終調査をお願いしています。その結果次第で、緊急ミッションが発令されるかもしれません」



 オークキング……それは何十年も前に実際あった話である。あるダンジョンのオークの群れが街を目指して進軍をしてきた。そこまでの数ではなかったが、そのオークに指揮されたオークたちは圧倒的なまでの能力を得るそうだ。おそらくそういうギフトを持っていたのだろう。冒険者が止めに入ったときには二つの街がオークの軍勢によって滅ぼされたそうだ。最後にはA級冒険者たちによって倒されたが、被害は相当なものだったらしい。もちろんそこまで、強力なギフト持ちの魔物はそうそういないが、冒険者の教訓として語り継がれている。



「それではお二人には、洞窟でおきたことを話していただけますか? いつもと違うなっていうことや、オークたちの動きに異常があった場合はどんな些細な事でもお願いします」



 そうして、俺たちはアンジェリーナさんに洞窟で会ったことを話すのだった。すでに報告書という形でギフト持ちオークのことなどは話しているが、直接こちらの口からききたいということなのだろう。スライムと一緒にパーティーを組んだとか、冒険者たちが襲ってきたこと、そして例のギフト持ちオークの話した俺たちはついに解放された。特に冒険者たちが襲ってきた時の話でアンジェリーナさんが怒ってなだめるのが大変だった。でもちょっと嬉しかったのは内緒である。

 ギルドでの話が終わった俺たちは街へと繰り出す。緊急ミッションが発令される可能性があるのだ。武器や防具、道具の準備をした方がいいだろう。それにイアソンとの勝負のおかげで懐は暖かい。ちょっと贅沢をしてもかまわないだろう。



「この後どうするか? そういえばカサンドラはこの街にきてまだ日が浅いんだろ? 暇だったら案内するよ、ついでに色々まわろう」

「本当? いい武器屋とかを教えてくれると助かるわ。ふふ……なんか人と街をまわるのって嬉しいわね。何年振りかしら……せっかくだし、服を着替えてから待ち合わせしましょう」

「そうだな、確かに結構よごれているしな」



 そういってカサンドラは嬉しそうに笑う。なんかデートみたいな雰囲気だな。いや、着替えってことは遠回しに臭いって言われたのか? トロルの返り血浴びてるし……

 そして俺たちは待ち合わせ場所を決めてそれぞれの宿に戻るのであった。

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