第13話 シオンの強み

『トロルは今森の奥にいるよ!! いつも食べ物をありがとう』

「こちらこそいつも助かってるよ、次に来るときも持ってくるよ」

「シオン何を話しているの?」



 トロルのいる森へ入る前に、俺が鳥に餌をやりながら会話をしていると、興味をもったのかカサンドラが声をかけてきた。そういえば、アスもこうやって声をかけてきてくれてたな。



「ああ、こいつにトロルの場所を聞いておいたんだ。こいつらは空から森をみれるからね」

「へぇー、便利なギフトね。でも、そんなにすぐに動物と仲良くなれるものなの?」

「いや、俺のギフトはあくまで話すだけだよ、だからいつもダンジョンや森に入る前に動物たちと仲良くなっているんだ。彼らの力を借りられると色々と便利だからな」



 クエストがない休日も時々餌をやりに行っている。そういえば、ライムと仲良くなったのもダンジョンの下見にいったときである、結構出会いがあってうれしいし、動物や魔物は色々と思いもよらない情報が手に入るので楽しい。



「へぇー、すごいわね……それで鳥は何て言ってたの?」

「ああ、トロルのだいたいの場所と数、あとは美味しいきのこの場所を教えてくれたよ。冒険者がよくとって帰るらしいから、換金できるかもね」

「え? すごいわね。こういうフィールドでのクエストは索敵が一番大変なんだけど、あなたがいれば困らないわね。そういえばダンジョンでも蝙蝠やスライムといたけど……」

「ああ、蝙蝠には魔物のだいたいの場所と、ライムには洞窟の最近の変わったことを聞いていたなぁ。戦闘じゃなきゃ便利なんだよな。このギフト」

「ええ……本当にパーティーに一人はほしいわね……でも、なんでこんなに優秀なのに首になったのかしら? パーティー内の女の子かたっぱしから手を出したとか?」

「そんなわけないだろ!! それは俺が弱いからだよ……みただろ、俺のスキルをさ……」



 そう、俺のスキルはすべてが中級どまりである。ギフトが戦闘向きではなかったから、何か才能がないかさがして必死にいろんなことを学んだのだ。それでも結局上級のスキルを得る事はできなかったのだ。そもそもアスは幼馴染だし、メディアにいたってはイアソンにしか興味がない。




「あのね、あなたは二つ勘違いをしているようだから言っておくわ。ソロだった私が言うのもなんだけど、一つはパーティーには役割があるの、私のように剣を使うものは接近戦を、そして魔法使いは遠距離攻撃みたいにね。あなたは斥候としては優秀よ。あとね、あなたはすべてが中途半端と言っていたけれど、どれも中級までってのはすごいのよ、どの分野のサポートでもできるってことでしょう。今頃あなたを追放したパーティーは後悔してるんじゃないかしら?」

「そうかぁ? 全部中途半端って馬鹿にされてたけどな……」



 結局その役割を果たせなかったからこそ追放されたのではないだろうか? 俺は疑問のこえをあげるが、彼女の目は真剣だ。なんというかこう、信頼を寄せられると嬉しいような恥ずかしいような……そして胸のなかが暖かくなった気する。しかし、ちょっと疑問に思ったことが出来たので聞いてみる。



「カサンドラってソロだったのに、結構詳しいんだね」

「その……いつかあなたのような人間に会えたらいいなって思って、色々勉強はしていたのよ」

「よっしゃ! 俺達で最高のパーティーを結成しよう!!」



 ちょっと恥ずかしそうに言うカサンドラをみて俺は彼女を幸せにしようと誓った。俺は絶対追放とかしないからね。あとさ、一個勘違いがあるからそれは正しておかないといけない。



「あとさ、なんか勘違いしてるみたいだけど、俺は全然女の子にもてないんだけど……」

「はいはい、さっきのアンジェリーナさんっていう受付嬢とも仲良さそうだったじゃない」

「ああ、彼女は俺が新人の頃からお世話になっているんだよ。なんというか手間のかかる弟をみる目だと思うけど……」

「ふーん、そんな感じはしなかったけど……まあ、いいわ。せっかくだしあなたに使えそうな技を考えておいたから、トロルで試しましょう。いざとなったら私が助けてあげるから安心しなさい」

「ありがとう、カサンドラ」

「気にしないで、だって……私たちは相棒でしょう。困ったときは助けあうものよ、だから私のピンチも助けてね」

「ああ、任せておけ」



 自分で言っていて恥ずかしくなったのか、カサンドラは顔を少し赤らめて言った。それにしても俺に使えそうな技ってなんだろうか? 楽しみである。

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