第4話 対話

 何度この場所に来ても緊張する。俺が緊張しているのがわかっているかのようにアイラ様が


「深呼吸して。そしたら緊張がほぐれるわよ」


「あ、ありがとうございます」


 大きく空気を吸ってから吐く。数度この動作を行う。すると手の震えが収まってきた。するとルビアが俺の手を握ってくる。


「大丈夫。ママもパパもわかってくれるわ」


「うん」


 暖かかった手。少し繋いでいただけで震えが収まった。


「あら? そんなにまずい相談でもするの?」


「違うよ。相談って言うよりお願いかな?」


「ふーん。じゃあ入りましょうか」


 アイラ様の合図と同時に扉が開く。昔と何も変わっていない。赤いじゅうたんが入り口から国王が座っているところまで敷かれている。国王の隣に親父が、じゅうたんの周りには顔見知りの騎士が立っていた。


「アイラとルビアが一緒に入ってくるなんて珍しいな。それにノアくんもいるじゃないか! どうしたんだ?」


 国王であるカーター様に名前を呼ばれてビクッとしてしまう。


「パパ! 少し話があるからここにいる騎士たちを部屋から出してもらえる?」


「ん? 全員は無理だぞ? まあノアくんがいるからリアムを残すか」


「うん」


 ルビアの言った通り親父以外全員が王室を出ていった。


「ここにはローリライ家とアリアブル家しかいない。少しぐらいため口になっても大丈夫だからノアくん、肩の荷を下ろしなさい」


「はい」


 そう言われてもすぐできるわけない。


「それでどんな用件なんだ?」


「パパとママにお願いがあるの」


「言ってみなさい」


 ルビアがお願いと言った瞬間、国王はルビアに対して敬語になった。多分一人娘の願いを聞くというより一市民として聞いているのだろう。


「ノアを私の護衛にしたい」


「ん? ノアくんを? でもノアくんは勇者パーティではなかったか?」


「今日ノアが勇者パーティを追放されたって聞いた。だったら私の護衛にどうかなって思って。ノアなら実力も申し分ないから...」


 国王の顔が少し険しくなる。


「そうか...。ノアくんも大変だったな」


「お気遣いいただきありがとうございます」


「ダメかな?」


 するとアイラ様がニコニコしながら


「私は良いと思うわ」


「いいとは思うぞ。でもそれは身内の目線からだ。王宮にはノアくんを知らない人が大勢いる。それが名前ネーム持ちなら話は違うが、ただの青年が今日からルビアの護衛をやりますと言って納得すると思うか?」


「...。そうだよね」


 国王が言っていることに誰しもが納得する。だからルビアも言い返せない。まあそうだよな...。


「でもノアくんが実力を証明したらどうだ?」


「! みんながノアのことを認めてくれる」


「そうだ。だからもしノアくんがルビアの護衛をやりたいなら試験を行なおうと思う。ノアくん、どうだい?」


 こうなると思ってもいなかった。でも嬉しい誤算だ。あの時からルビアに命を託すと決めている。だったら断る理由はない。


「はい。やらせていただきます」


「そうか! じゃあ明日のこの時間にまた王宮に来てくれ」


「本当にありがとうございます」


「いいよ。ノアくんは私の息子みたいなものだからな」


 国王との話が終わり、王室を出ようとしたら親父が


「仕事が終わったら家に帰る。体を温めておけ」


「わかった」


 多分親父が直々に稽古をつけてくれるのだろう。


(稽古なんて久々だな)

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