第3話 よく確かめて

掘り始めようとスコップに足をかけて思いっきり力をかけて押し出す。

その瞬間、目の前にやって来た大きい虫に驚き、スコップから足を滑らせてしまう。

それと同時だろうか?

後方で爆発音がしてそれと同時に目の前にいた虫は消えていた。尻込みした自分は何が起こったのか理解不能であった。

「みんな隠れろ! 誰かに発砲されている!」

だが、隊長の声で理解した。さっきの音は僕たちに向けられていることに。

僕もすぐに石碑の裏に隠れて身構える。

遠くから高い声が聞こええてきた。

何やら注意をしてきているが、何を言っているのか分からない。

誰かが徐々に近づいて来ている。

おそらく狙ってきたスナイパーだろう。


切迫している状況で角ばっているものが頭に当たり、少し声を漏らしてしまう。

「イッテー!」

今の声で完全にばれてしまった。投げられた物を確認するとそれは翻訳機であった。

これでせめて話をしようと試みるが、相手はいきなり発砲してきた。

着弾音が少し離れた所から聞こえたためこちらに撃ったのではなく、翻訳機を投げてきた方に撃ったのだろう。

翻訳機を持っているのはウェーブであったはず、そうするとさっき撃たれたのはウェーブだろう。仲間の心配をしているが一番危ないのは自分である。

謝罪だけでは許されない可能性があると考えた僕は、石碑の裏に来るまでの数秒でなにかできることはないか考えたが何も出てこなかった。近くにあった花を手早くまとめて花束にしてみた。

足音がすぐそこまで来ている所で僕は立ち上がった。

「いや〜、本当にごめんね。 お詫びにこれあげるから許して欲しいな」

速攻で用意した花束をあげるために相手を見てみると長めのポンチョを着た幼い少女で、首にはネックレスがかかっていた。

少女は何か言いながらこちらに銃口を向けてきた。それに続いて翻訳機が後追いで喋り出す。

「あなた達は悪い人だ! ここで消えてもらう!」

矛先は僕の額に向けられている。急いで事情を説明しなければならないが、その前に撃たれるかもしれない。そんな緊張が漂っていた。

「ちょっと待ってくれ! ちゃんと理由があるんだ!」

今にも引き金を引きそうな少女に腰が引けてしまい、慌てふためいてしまう。

するとポケットに入れてあった懐中時計を落としてしまった。

だが少女はそれを見た途端、手の動きが止まった。

「なんであなたがその懐中時計を持っているの?!」

最初は翻訳機の声だと思い、しばらく翻訳機の反応を待っていたがいくら待っても返事がない。よく考えると少女の声に似ているような気がする。そう思って少女の顔を見ると表情が少し怒り顔になっていた。

「なにか言いなさいよ!」

少女に思いっきり頭を叩かれてしまった。そしてようやく、さっきの言葉は少女が発してことに気づく。

「これは母親からのプレゼントでもらった物なんだけど壊れちゃっているんだ」

少女は納得のいかない表情でただ頷くだけであった。

「本当は喋れたんだね。イグリナ王国の共通語。」

気楽に少女に話しかけるが何も言ってこない。

何を考えているのか聞いても、話しかけないように注意されてしまった。そして、この場に乗じてどこかに行こうとすると少女の銃口がこちらに向いてくる。遠くで見守っている隊のみんなにまだ来てはいけないことを身振り手振りで伝える。

 だがウェーブがドバルボルを取り出して指を指してから、耳を塞いでいる。最初は何を言ってるのか分からなったが、それはすぐに察した。彼は指を五つにして次に四つにする。これが意味することはカウントダウンであることだ。急いで耳を塞いだ。

少女がこちらに向いた時には時すでに遅し、手元にある通信機は大きなブザー音を鳴らし少女の耳に大きなダメージを与えた。そして後ろから隊長が木の棒で倒そうとするが、木の棒が少女の頭に当たる前に銃声がなった。そして少女が大きな声で叫ぶ。

「少しは黙ってろー!」

全員が黙り、静かになると少女が僕に聞いてきた。

「あなた達は何の目的でここにいるの?」

本当はその説明をさっきからしようとしていたのだが、それはさておいて。

「とても大切な物がここにあるんだ。でもどこにあるのかわからなくて……」

少女に今までの経緯と今やっていることを説明する。

「なるほどね。でも、その情報はそもそも正しいの?」

少女の言っていることは正しい。この情報は元々バルグからの情報でその信用性は本人しか知らない。そう思って本人の方に向いて確認しようとしたら肝心の本人がいなかった。


すると、雑木林の所から酔っ払っているはずのイグナがやって来た。

少女は咄嗟にポンチョで隠れていた腰の所から拳銃を抜き取り、イグナに銃口を向ける。

「どうしんたんだい?嬢ちゃん〜」

イグナがいつもの軽い感じで聞くと少女は睨み付けながら言った。

「そんな馴れ馴れしく聞かないで!」

イグナにそう言うと僕がいる所へまとめられた。

そしてやって来たイグナの肩をたたいて、小さな声でどうやって来たのかを聞くと手から小さな紙を出して、おじいさんに教えてもらったと答えた。

その紙には場所とそのおじいさんが書いたらしい読めない文字があった。

二人でこっそりと話していると後ろからさりげなくバルグが帰ってきた。

「お前、どこに行っていたんだ! お前のせいで大変な目にあっているんだそ!」

僕は条件反射的に言ってしまった。こんな事をいきなり叫ぶと少女の拳銃が僕に向けられるのだが、今度は何も言われなかった。そこで僕は一か八かで少女にイグナのもらった紙を見せた。すると少女は驚き、何度も紙を見た。

「なんで、あんた達が町長のサインを持っているのよ!」

どうやら、僕の感が当たったみたいだった。僕の予想では、紙の下の方に書かれていた読めない文字は石碑に書かれていた文字と同じ文字がいくつかあったので、この村に関係する誰かであると思っていた。でも、さすがに町長だったとは思わなかった。これほど説得力のある証拠品はないはず。

「この紙なら、白髭生やした杖をついている長老に教えてもらったぜ?」

イグナが話すと隣にいるバルグも同じような人に教えてもらったと言っている。

「でも、この紙に書かれている場所は石碑じゃなくてじゃなくて、ここの案内所を指しているんだけど」

これを聞いたイグナが顔を真っ青にして言った。

「あれ、ここじゃないの?」

どうやら聞いた情報を誤解してしまっていたようだ。

少女が肩を落としてため息をつく。

「わかったわ。とりあえず、案内所に案内するからついてきて」

こうして少女の後について行くと大きな看板の前まで連れて来られた。

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