第27話 ディールさんは実はドワーフです。

練が鍛冶屋に弟子入りしてから鍛冶屋に弟子入りしてから数か月が経った。

冒険者としての修行と鍛冶師としての修行を同時にこなすことは時間的にも体力的にもかなり厳しいだろうに、練は文句も言わずに徐々に力をつけていった。

冒険者としては一月ほど前についに一人でのオーク討伐に成功し、アリスから独り立ちすることに成功し、今はたまに冒険者として依頼をこなして生活費を稼ぎ、基本的には鍛冶師のおじさん、ディールの元で修行をしていた。

愛斗もその間暇をしていたわけではなく、冒険者としていくつも依頼をこなし、旅の資金を精力的に貯めていた。

そのおかげか、愛斗は低級冒険者としては異常なほどに蓄えがあった。

これは、愛斗が無駄遣いをしないというのもあったが、普通の冒険者は明日をも知れぬ身という事で、あまり蓄える、という事を考えず、蓄えていても一月程度は仕事をしなくても大丈夫、という程度にしか残さないのだ。

それを、愛斗はそろそろ一年程度なら依頼を受けずとも生きていけるほどに貯めていた。


その両者の間にあった違いは、目的の違いだろう。

普通の冒険者は、生きていくことが第一目標で、冒険者になるのはその手段に過ぎないのだが、愛斗は、まだ何もしていないが、他の勇者を探し出し、味方につけることが必要だった。

そのためには、何時までも受け身でいるのではなく、自分から彼らを探しに出なければいけないと考え、これに関しては練とも話し合い、いずれは他の勇者たちを探しに旅に出ることを決めていた。

そのため、練は一刻も早く独り立ちを、愛斗は資金集めを精力的に行っていた。


もちろん、強くなるにこしたことはない、と訓練は続けており、C級相当のモンスターも時間をかけることで何とか討伐することが出来るようになっていた。

更に、魔力の制御についても、完璧とまではいかないまでもある程度は口に出して意識することで、それなりに使えるようになっていた。

その結果、つい数日前にようやく愛斗もC級冒険者の仲間入りを果たしていた。



「「乾杯!」」


そして、それなりの頻度で開催されるようになった、愛斗と練の二人だけの飲み会が今日も開催されていた。

持っていたジョッキに軽く口を付けただけに抑えた愛斗に対し、練はもっていたジョッキの中身を一気に飲み干すと、すぐにおかわりを通って行った店員さんに頼み、愛斗に向き直った。

……余談だが、ディールの元では仕事終わりに毎回飲んでいるらしく、そこで練は酒の美味しさを知ってしまったようで、そして愛斗よりも酒が強かったこともあり、かなりのペースで飲んでいる。


「今日は、朗報があります!」


そう言った練は、既に酔っているわけではなさそうだが顔を赤くしていて、相当興奮しているのだろうことが愛斗にも伝わって来た。


「ついに! ディール師匠から独り立ちの許可が下りました!」


「おお! おめでとう、思ってたよりだいぶ早かったな!」


そして告げられた言葉は、ある程度は予想していたもののそれでも凄いことに変わりなく、愛斗は拍手をしていた。


「ということで、もう少ししたら出発できる、という事を早く伝えたかったの」


「俺の方も、この間言ったけどかなり貯まっているから、準備さえ済めばいつでも行けるよ」


二人とも明るい報告、そして予定も決められそうだという事で機嫌よく、そこからいつ旅立つのかを話し始めた。

結局、準備や別れの挨拶のことも考えた結果として三週間後に出発することに決まった。



……ちなみに、愛斗は知らないことだが、愛斗と練の二人は普段から仲良く二人でいるところが見られていて、フーリの町の中ではもう付き合っていることになっている。

もちろん、そんな関係になろうとは愛斗は思ってもいないのだが、練にとっては都合がいいと噂を否定することはしないのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る