第5話 魔法チート!?…残念、世界はそこまで甘くなかった(´;ω;`)

「それでは、続いて魔法関連の試験を行いたいと思います。……とはいっても、アイトさんは渡りモノとのことなので、魔法については分からないと思いますが、魔力量と魔門の測定だけなので、魔法が現在使えなくても問題はありませんので安心してください」


 愛斗がゴンツたちの元へと辿り着くと、そこに居たもう一人の男性が口を開いた。

 しかし、地球からいきなりこちらに来て未だこちらの世界についても分かっていない愛斗には魔力量については何となく分かったものの、魔門についてはさっぱり分からなかった。

 そもそも、それ以前の問題として……


「えっと、とりあえず貴方は誰ですか?」


 そう、愛斗からしたら男性は初対面の何も知らない他人なのだ。まずは誰なのか気になるのは当然だろう。

 すると、男性の方も自己紹介をしていなかったことに気が付いたのか愛斗に改めて向き直ると名乗りを上げた。


「初めまして愛斗さん。私はここの冒険者ギルドの服ギルド長をしております、リックと申します。そして、当ギルドでの魔法関連の仕事を請け負っておりまして、愛斗さんの魔法についての試験を監督しに参りました」


 リックの自己紹介を聞いて、愛斗はいきなり服ギルド長が出て来たことに驚きつつも挨拶を返しながら、知らないことについて聞くことにした。


「ご丁寧にありがとうございます。……それで、魔力量についてはなんとなく分かるんですけど、魔門って何ですか?」


「そうですね……軽く説明しておきましょうか。まず、この世のあらゆるものは魔力を自ら生み出す、もしくは他から吸収しています。その魔力を用いて魔法を使用するのですが、魔力量とは自身で生み出して自らの内に貯め置ける魔力の総量のこと、魔門とは魔法を使う際に瞬間的に吐き出せる魔力の量、といった認識でいてくれれば分かりやすいかと思います。魔力量が多いとその分多くの魔法が、魔門が大きいと高威力の魔法が使えるようになります。そして今からはこちらの魔道具を使って実際に魔法を使ってもらうことになるのですが、この魔道具は魔法を使うと持ち主の意思に関係なく、持ち主の出来る最大威力、つまり魔門の最大値を図ることが出来るようになっております。そして、魔力量の試験については私と魔力の共鳴をして頂き、それによって測定することになります。こちらも私が主導して行うので、魔法を使うことが出来ない方でも問題なく試験を行うことが出来ます」


 リックはそこまで言うと分からないところが無かったか尋ねるように静かに愛斗を見ていた。

 リックの説明は、疲れた頭には少し長かったが、かなり分かりやすく、それにゆっくりと話してくれたので特に問題なく理解することが出来た。

 その旨をリックに伝え、早速試験は始まった。



 まず行ったのは、魔力量の測定からだった。

 試験を行う際にリックに説明されたのは、魔門の試験を行って身体と魔力量の測定を正確に出来なくなってしまうからだと言われたが、実際に魔法を使ったことの無い愛斗にしてはどっちでもよかったので気にせずに、リックと手を繋いだ。


「それでは、これから魔力量の測定を行います。身体の中を何かが動くような感覚があると思いますが、害は無いので気にせずにいて下さい」


 そう言ったかと思うと、すぐに愛斗の身体の中を何か熱いものが通る感覚があった。

 これが魔力か、と思いながら待つこと少し、リックは手を離すと魔力量の測定は終わったと言ってきた。

 そして一度地面に置いていた魔道具を拾うと、愛斗へと渡した。


「それでは、次は魔門の測定を行います。これを持って、火よ、と願ってみてください。そうすれば魔法が発動いたしますので」


 そして渡されたものを持って、愛斗はドキドキしていた。

 なんといっても、ただの一高校生だった自分が魔法を使えるようになるのだ、興奮しないほうが無理な話であろう。

 そんな気持ちで、愛斗は心の中で火よ! と叫んだ。


 ゴォオオオ!


「うわぁ!?」


 次の瞬間、目の前に直径五メートルはあろうかという巨大な火の玉が現れた。


「っす、すごい! もしかして俺、魔法チートが出来る! ……あ、れ……?」


 そうして浮かれたのも束の間、目の前に浮かんでいた巨大な火の玉はすぐに消え失せ、愛斗は身体の中から何かがゴソッと無くなっていったような感覚に襲われて、盾無くなってしまうのだった。


「……驚きましたね、ここまで魔門が大きいとは……」


 リックがそう呟いているのは聞こえてはいたが、愛斗は応えることも出来ずに荒い息を繰り返しているだけだった。

 すると、いつの間にか傍に来ていたマリーに横にさせられ、優しい声を掛けられた。


「ほら、ゆっくり息を吸って、吐いて……。一度休みなさい」


 頭を撫でられて、愛斗はそのまま一度目を閉じるのだった。

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