〜百鬼家はバレンタインとホワイトデーが逆〜

「なるほど。それが親父と母さんの馴れ初めかー。しかし、母さんが飴をプレゼントするなんて変わってるね。普通ホワイトデーは親父が返すもんだろ?」

「それは千尋が言い出したんだよ。普通じゃつまらないから、うちは逆にしようって。だから、バレンタインはアタシがいつも千尋にチョコをあげていたんだ。アタシからは名店のチョコを、千尋からは希少な飴を互いにプレゼントしていたんだ」

「お二人らしいやり取りですな」

 獅恩は獅斗の隣に座って飴を口に入れた。口に入れた瞬間、笑みが溢れる。

「美味いよな獅恩」

「うん!!毎年これが楽しみなんだ!!」

「そう言っていただけて何よりです。それでは、あっしはこれで失礼します」

 出されたお茶を飲み干して席を立った。獅恩は「もう帰っちゃうの?」と寂しそうに言った。

「申し訳ございません。仕事がまだ残ってまして。また千尋様の命日にお伺いいたします」

「わざわざありがとう。エントランスまで見送るよ」

 獅斗は立ち上がって一緒にエントランスへ向かった。獅恩は飴の入った箱を持って仏壇に行き、「母さん今年も飴ありがとね」と礼を言った。手を合わせていると、マコトがやってきた。

「マコトだ。マコトも一つどうぞ。母さんからのプレゼントだよ」

「ありがとうございます。あっしも密かに楽しみにしてて。獅斗様からいつも分けてもらってるんです」

 笑顔で飴を頬張り、ソファに座って獅斗の帰りを待っていた。数分後、獅斗が戻ってきた。

「マコト。そこの小さい箱に飴入れといた。アゲハと一緒に食べなさい」

「ありがとうございます」

 マコトは箱を内ポケットにしまった。獅恩も鞄を持って一緒に獅斗の部屋から出た。

「そういえば、もうすぐ春休みですね。何かご予定はありますか?」

「予定はないよ」

「良かったら温泉行きませんか?タトゥーがあっても入れるところを見つけたんです」

 獅龍組のメンバーはみんなタトゥーを彫っている。だから、カタギの行くような温泉にはずっと行けなかった。

「誰か誘いたい人いますか?」

「親父、温泉好きだよな。家に温泉引くくらいだし」

「それなら国士無双も一緒に行きます。何があってもいいように」

「部屋に温泉ついてる?そしたら、親父も無理なく楽しめると思うよ」

 マコトはネットで部屋のことを調べると、獅恩が言っていた部屋に露天風呂がついている部屋が見つかった。

「国士無双にはあっしが連絡を入れておきます。温泉楽しみですね」

「うん!!」

 獅恩は玲央に春休みに温泉行くことを連絡すると、温泉まんじゅうを頼まれた。

「温泉楽しみだな。ご当地グルメとか調べておこう」

 学校は来週で終わり、いよいよ春休みが始まる。



〜獅斗と千尋の馴れ初め終わり〜


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