〜運命の再会〜
中に入ると、啓介と雄二が互いに挨拶を交わしている。獅斗は淡いピンク色の着物を着ている女性に目を向けた。女性は彼に気付いて顔を上げた。
「あら、またお会いしましたね」
「えっ?」
獅斗は驚いて彼女を見ると、なんとそこにいるのは千尋だった。
「千尋さん……ヤクザだったんですか?」
「ええ。ビックリしましたか?」
「獅斗様。千尋様とお知り合いですか?」
「ああ。昨日病院のカフェでたまたま……」
「それは話が早い!!じゃあ、俺らは部屋から出ます。お二人でじっくりとお話しください♪」
彼らは部屋を出て行った。いきなり二人にしないでくれと心の中で叫んだ。
「いつまで立たれているんですか?こちらにお座りになって。美味しいお食事を堪能しましょう♪」
刺身などの和風料理がたくさん並んでいる。千尋に酒を注いでもらって乾杯して一口飲んだ。
「美味しいお酒ですね。普段からよく飲まれるんですか?」
「いえ、ときどきしか飲まないです。体が丈夫ではないので。あまり飲めないんです……」
「良いのですよ。お酒は嗜むものなんですから。あたしだって実はあんまり飲めませんからね」
「千尋さんお強いイメージがありました。意外ですね」
「そう思っていただけて嬉しいです。獅斗さんも割と飲めそうなイメージありましたよ?」
気付いたらお互い笑顔で会話を楽しんでいた。獅斗は女性との会話にあまり慣れてないことを告げると、彼女が会話をリードする形をとっていた。
「あたし、昔から組長である父親にガサツだってよく言われるんですの。それに言葉遣いも男らしいって言われてて……」
「そうですか?そんな感じ全然しませんが」
「敬語だからですよ。打ち解けたらきっとビックリされるかもしれません」
「アタシは別に気にしませんよ。それも個性じゃないですか」
彼女は嬉しそうな表情を浮かべて「そう言ってもらえて嬉しいです」と言った。
「獅斗さんとのお話とても楽しいです。今度はスイーツバイキングに行きませんか?」
「一度行ってみたかったんです。是非とも行きましょう♪」
「決まりですね。よろしければ連絡先交換しませんか?」
連絡先交換して、その日はお開きとなった。
※※
お見合いから一週間後。千尋からRineが届いた。
『こんにちは。この前話したスイーツバイキングに行きませんか?』
彼女からのお誘いに心躍る。返事はもちろんイエス!!すぐに返事をすると、彼女からも即レスがきた。
『そうおっしゃって頂けると思っていました。いつ空いていますか?』
『来週の土曜日はどうですか?』
『大丈夫ですわ』
スマホを見ながら思わずニヤけてしまう。その様子をなんと啓介に見られてしまった。
「何か良いことでもありましたか?」
「へへ。またデートすることが決まったんだ。啓介は来週の土曜日空いてたよな?」
「ええ。もちろん。土日はどちらか公休の予定ですから」
「じゃあ土曜日空けておいて。◯△町にあるスイーツバイキングに行くことになったから」
「承知しました。その日はたくさん召し上がられると思いますので、洋服で行くのがいいですよ」
彼は普段から和装で過ごしているため、私服をあまり持っていなかった。啓介が私服を買いに行こうと、デパートまで連れて行った。
「獅斗様の体型でしたら、何でも似合うと思います。パーカーとか似合いそうですがね。カジュアルスーツみたいな格好もいいですね」
啓介はいくつか服を手に取って獅斗に合わせている。店員のアドバイスをもらい、上下を買うことができた。
「良い買い物ができましたね。来週が楽しみですね」
「うん……服ダサいって言われないかな」
「大丈夫ですよ。店員もカッコいいって言ってたし、自信もってください」
※※
そして迎えたスイーツバイキング当日。慣れない洋服を着て待ち合わせ場所へと向かった。
「獅斗さん」
待ち合わせ場所には可愛いらしいワンピース姿の千尋が立っていた。
「千尋さん、お待たせしました。遅くなってしまい申し訳ございません」
「あたし今来たところですわ。楽しみ過ぎて眠れませんでした」
可愛いらしい理由だなと彼は微笑んだ。
「じゃあ俺たちは一旦帰ります。終了時間分かり次第ご連絡下さい」
「うん、ありがとう。また後で」
「行きましょう獅斗さん!!確か制限時間は九十分でしたわ」
彼女は獅斗の手を引いて店内へと入る。席に案内されて、上着をイスにかけて席を離れてスイーツ選びに行った。しばらくして、二人の皿にはたくさんのスイーツが山盛りになっていた。
「いただきます♪」
一瞬にして山盛りのスイーツが無くなった。彼女は紅茶を飲んで一息吐いてから、「取ってきますね」と言って皿を持って席を離れた。彼も彼女の後をついていった。時間いっぱい楽しんだ後、紅茶を飲みながらいろいろな話をした。
「千尋さんの好みの男性像を教えてください」
「そうですね……男らしくて頼れる殿方が好きですわ。獅斗さんは?」
「アタシは……お互いの弱点を助け合える方が理想です。アタシは体が弱いので、頼ってしまうことが多いと思います。その代わり、アタシにできることを精一杯相手に尽くしたいと考えています……」
彼女は優しく微笑んで「ステキですわね」と言った。
「獅斗さんはお優しい方なんだなと話を聞いているだけで分かりますわ。あたしも獅斗さんの助けになりたい。あたしたちに子どもができたら、弱者を守れる子に育てたいです」
獅斗は拳をぎゅっと握って真剣な表情を向けた。
「千尋さん。アタシと一緒に獅龍組を盛り上げてはいただけませんか?もちろん、アタシのもとに来るというのは、千尋さんも命を狙われることになってしまうのですが……嫌なら断ってくれて構いま……」
彼女は獅斗の手を握って「あたしで良ければ」と承諾した。彼も満面の笑顔で言った。
「ありがとう。これからよろしくお願いいたします」
続く。
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