第13話 人の進化

「はぁ〜」


俺は再びあの基地に向かっていた。


「お、帰ってきたのか」


偵察中の機体と遭遇した。


「…まぁ」


「そうか、シズさんなら居るぞ」


「ありがとう」


「…任務じゃなさそうだな」


「ああ、俺の意思で来た」


「…理由は?」


「嫌気が差しただけだ」


「そうか、ま、シズさんに甘えてこい」


「ふ、そうさせてもらう」


「じゃあな」








シズの自室


「はぁ〜」


「シズちゃん、昨日からずっと

ため息ばっかだね」


「うーん、なんでかわからないけど出ちゃう」


「おい!(笑)2人とも(笑)」


「何ですか?カイザーさん、笑いながら入ってきて」


「帰ってきたぞ!」


「誰が?」


「ローズが!」


「ふぇ!?」


「早くない!?」


「久しぶり?なのか?」


何だ?騒がしいな。


「何で!?帰ってきたの!?」


「リングが嫌いになった」


「ぶはははは!」


カイザーが豪快に笑う。


「最高だな!何だ?理由は?」


「『殺しは救済』とか言う司令官が嫌いになった」


「そうか!くっ…くふふ…」


「笑いすぎだ!カイザー!」


「いや!あの司令官…遂に脱退者が出たか!」


「知ってるのか?」


「知ってるも何もあいつはムーンでもかなりの酷評を貰ってる司令官だ」


「…ムーンに対して容赦ない、人の心が無いかのような命令を出すって有名よ」


「本当にあの司令官の無線盗み聞きしたとき反吐が出そうだった!」


「笑えるな、ここまでとは」


「それで、どうするんだ?これから」


「そうだな…正直どちらとも所属したくないな」


「そうか」


「俺はシズの開放を目的に動くつもりだ」


「そうか、だってよシズ」


「ふぇ!?///」


顔真っ赤だな、体調でも悪いのか?


「それでもアーツの燃料補給は必要だろ」


「そうだな…」


「ふむ…ならここで補給するといい」


「良いのか?」


「ああ、タダでな」


「まじかよ」


「ただし、働いてはもらうぞ」


「もちろんだ」


「さて、まず働く内容だが」


「ああ」


「とりあえずこの間やった畑作業を頼む」


「わかった」


「あ、私も手伝う」


「シズちゃんは行かなくても大丈夫でしょ」


「だって!今夏よ!ローズ絶対倒れるもん!」


「流石に体調管理はできるだろ」


「…」


…言えねぇ…5回も倒れてるなんて言えねぇ…


「5回倒れてるのよ!?カイザーさん!」


言われた!!


「…それとシズが行くのとの関係は?」


「熱中症対策として私の能力で体を冷やすの」


「…なるほど」












ムーン 農業区画


「ふぅ」


あと少しで畝が掘れるな。


「お疲れさまだなローズ」


「ああ」


ムーンの軍人がお茶を持ってきてくれた。


「助かるよ」


「それで、シズさんとどこまで行ったんだ?」


「どういうことだ?」


「馬鹿野郎、キスはしたのか?」


「しねぇよ」


「ならどこまでしたんだよ?」


「…膝枕と耳かきぐらいか?」


「…それでも羨ましいぜ」


「お前も見つけりゃ良いだろ」


「そうなんだがなぁ」


「それに、俺はシズを助けたいだけだ」


「そういえば何で助けようと思ったんだ?」


「同じ境遇だったからだ」


「改造されて、小さい頃の記憶を消され、売られたことか?」


「そうだ、だが俺は助けられた、だがシズは助けられずに売られてしまった」


「それで、お前が今度は助けると」


「そうだ」


「…それだけか?」


「それだけだが?」


「…それはお前自身が気づいてないだけで他に理由があると俺は思う」


「そうか?」


「ああ、ただ可哀想で済む話をお前は本気で助けようとする、これってよぉお前…実はシズさんに一目惚れしたんじゃないか?」


「そうな訳…」


「ゼロではないだろ?」


「…まぁ、そうなのかもな」


「お前は素直だが、所々鈍感なんだよ」


「…そうかもしれん」


「だろ?」


「で、何を話してるのかな?」


「お、シズさん」


「シズか」


「はい、氷」


俺とその軍人は、額にシズの作った氷を乗せられた。


「生き返る〜」


「ありがとうございますシズさん」


「いえいえ〜熱中症気をつけてね」


「「はい」」





「さて、休憩は終わりだな」


「お、そうだな」


2人でクワを持ってまた畑に向かった








「はぁ〜、疲れた」


ボブンとベッドにそのまま倒れ込んだ








???


「久しぶりだな」


目を覚ますとそこは部屋ではなく平原に居た。


「…あんたか」


あの時に夢に出てきた男だ。


「コードネームがローズになったんだってな」


「なんでそれを知ってるんだよ」


「そりゃあ夢だからだよ」


「…それもそうか、であんたは一体誰なんだ」


「…ふむ〜そうだな…強いて言うならお前のおじいちゃんだな」


「はぁ〜?じいちゃん?」


「そう、いや正確に言うならご先祖様ってところか」


「ご先祖様…」


「ま、それは置いといて、今回は派手に寝たな」


「そうみたいだな」


「…お前は力が欲しいか?」


「…欲しいさ」


「何のために使う」


「…人を救うため」


「そうか、なら人を救うためにお前は何をする」


「…悪を滅ぼす」


「それでは人を救う事にはならない」


「…」


「いいか、お前は人を殺すことに躊躇しない、これは才能だ」


「そんな才能いらない」


「この才能は殺し屋のものだ」


「なおさらいらない」


「めんどくせー末裔だな…いいか俺が言いたいのは、不殺主義では人は救えない、こればかりはどうもならん」


「それでも!」


「お前は最愛の人が目の前で殺される寸前でその敵に対して、不殺主義を通してそいつを殺さないで最愛の人を見殺しにするのか?」


「助ければいいだろ」


「馬鹿野郎!お前は人を救うためとか言ってるが!人を殺さずして人は救えない!」


「…っ」


「だが、不殺主義が悪いとは言っていない、時には人を殺せ、そして殺した人以上の人を救え」


「…」


「ふ、何だ?ご先祖様に怒られて怖かったか?」


「…そうだな、怖かったさ」


「はははっ!そうか!」


「でも、わかったよ…俺は甘ちゃんだった訳だな」


「…」


ご先祖様は微笑んだ。


「俺は人を助ける、やむを得ず殺すかもしれない、だがそれ以上の人を…

救う」


「…ふっ、合格だ」


「そりゃあ良かった」


「よし、お前に力をやろう、と言っても『覚醒』の条件だけだがな」


「『覚醒』?」


「そうだ、人間全員に能力は存在する、だがほとんどの人間は発現することなく死亡する」


「ほうほう」


「しかし極稀に覚醒し、能力を公使する者が現れる、例を言えばシズとかだな」


「なるほど…」


「『覚醒』の条件は

①死の間際に稀に覚醒

②魂の進化

③脳を改造する

この3パターンだ。」


「脳を改造する?」


「そうだ、説明する前に人間は皆

『純種』と呼ばれる」


「純粋な種…?」


「もう一つ、お前たちのように改造され異常強化された者たちを『改種』」


「俺は…改種なのか?」


「そうだ」


「ということは…俺は覚醒しているのか?」


「いや、お前はレアケースだ、改種なのに覚醒していない、失敗作ともとれるが、実際には少し覚醒している」


「少し?」


「経験はあるんじゃないか?そうだな『透明な敵が見えた』とか」


「っ!!」


そうだ、暁と戦った時に、突然ステルスなのに見えた…


「心当たりはあるようだな」


「ああ」


「となると、お前は

『改種』と『純種』の素質を秘めていることになる」


「…改種と純種の違いは何だ?」


「改種は無理やり脳を弄るわけだから勿論能力値は低い

だが純種は魂そのものが覚醒する、

しかし覚醒する者が少ないが能力値は高い」


「なるほど…」


「だが…お前は何故か2つの素質を持ってる」


「…覚醒するためには死にかけるか、魂が進化するしかない…と?」


「そうだな」


「魂の進化ってなんだ?」


「それは無理に近い、なぜなら下手をすれば体が崩壊する」


「…まじか…死にかけるしかないのか」


「だが、それも稀に覚醒だからな」


「…」


「心配するな、お前は俺の血を濃く受け継いでる、なら上手くいく」


「…」


突如地面が揺れた。


「おっと…目覚めが近いな」


「…寝た気がしない」


「ま、がんばれ」


「ああ」


辺りは眩い光に包み込まれた。

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