第4話 幼少期④ 触感


「おっす!カガミ!えっと7歳になったんだな!元気で生きてるって信じてるぜ!

 7歳のお誕生日プレゼントはぁ~ ドゥルドゥルドルル~ダン!!【レトロゲー】です!

 パチパチパチ!今回は冷蔵庫の上に隠しましたのでどうぞ受け取ってください!!

 ではまたらいねーん~~バイバイ。 ママ!録画ストップストップ!」


映像終了


 天道 京介てんどう きょうすけ 僕が5歳の時に死んだ父さんだ。去年もビデオレターだったが

 どう喜んでいいのか解らない微妙なプレゼントを送ってくれた。

尊敬と少しの軽蔑が入り混じったカッコいい父さん。たぶん売れない芸人だったんだと思う。


突然いなくなってどう思っているのか、父さんのビデオレタ―を上機嫌で見せてくる母さん。

まぁ普段から明るくやってるし僕が考えてもわかんないから特に気にしないけど、

ゲームでも3D技術が闊歩するこの時世、2Dドット絵メインの携帯レトロゲーを僕に送る父って

どうなのよ?


と思いつつ、起動確認し充電がないことを理解し、コンセントを探してレトロゲーを充電接続する僕。

父さん数日で飽きるだろうけどありがとう!


僕が5歳になるまで毎日遊び相手してくれた父さんは、思い出すと父というより

兄ちゃんのような存在で、死んだって聞いたときはよくわからなかったけど、

7歳だしだんだん分かってくるようになって あ、やっぱりもう会えないんだよね。

って思う事もある。コワくは無いんだけど、考えるとモヤモヤするんだ。



病院に行く回数は月1回から次第に3か月、6か月と伸び、母さんは伸びるたびに

食感の好きなフルーツでお祝いをしてくれた。

「ほんとあの病院に行くのしんどいよねぇ。」

僕は(迷惑かけてごめんなさい)って言いたかったけど、また泣かせるかもしれないなぁと思って口にしないでいた。


結局「そうだよねー。」とか「ですよねー。」なんかで済ます。いい下っ端にになれる予感がした。


家から病院まではバスと歩きで30分くらいの距離だったけど

母さんが泣いた日の定期健診は僕が【歩く】って言った我がままのせいで1時間はかかったし、

きっと僕がバスを使わなかったから疲れてたんだと思ってみたりもした。


検診の期間が長くなるのは良かったが、また会えるかなと思っていたアオリちゃんとはあれから全く会えなくて、ちょっと残念だった。


「母さんアオリちゃんちと知り合いなの?遊んだりできない?」って母さんに聞くと

目を見開いて悪戯っぽく


「んんー知り合い?まぁ知り合いかなぁ~連絡先までは知らないけど?どうしてもって言うなら調べてあげなくもないけど~。でどこが気に入ったの?目!?かわいいもんね~!あ、髪??キレイよねー白色!ビューティフル&キューティクル!もう合わせてビューティクルよね~。」


と目をハートマークにして話してきたので、

「あ、いいです。」と最近学校で習った不審者の対処法を実践形式で行った。

イメトレで成功率は上がるというが実践にかなう経験値はどこを探しても無いのだ。



僕としてはスイカの味をもう一回味わいたいだけなんだけど、あれから一度として僕に【味覚】が舞い降りる事は無くシャクシャクとした触感のみを楽しむ日々だった。


【味】っモノ感じた日、下手な説明だったけど母さんに言ったら喜んで貰えたんだ!


そして二人で試行錯誤してどうにかスイカの味を物にしようと頑張った夏だった。

たくさん試した結果、夏休みの工作は産業廃棄物としていっぱい出たアイスの棒を使ったくらいだったが得られるものは無く。僕は

(やっぱりアオリちゃんがいたからじゃないかな?)と何となくだけど、そう感じたんだ。


代わりと言ってはなんだけど、なんと友達らしい友達ができた!


名前は 原 竜二はら りゅうじ 母さんの知り合いの息子なんだけど病院でちょくちょく見てたから話しかけやすかった、検診日にお喋りしてる母さんたちの横で僕たちは 今や誰もやっていないレトロゲーのモンスターを交換していた。


レトロゲーだから退化してると思われては困る!なぜならば交換して進化するものもあるくらいだ!!


竜二は元気過ぎてケガが多いやつだが喧嘩とかはしない優しいやつだ。趣味も合った と言うより合わせてくれた。

母さんたちも僕たちが仲良くやってる事を見ててどうも似た病気だったみたいで親近感も沸いて家族ぐるみの付き合いになっていった。


秋の健診後の次回予約受付待ち。

僕と竜二はまだお互い暑かったのか半袖を着ている。背中を合わせてお互いを背もたれにしてゲームをしていた。


「かがみー 次の検診いつにする?ってさっきかーちゃん聞いてきたけどどうする?」

「竜二と一緒でちょうど3か月後でいいんじゃない?」

と僕、(親同士で話してよー)と思いながら竜二と一緒にゲームに集中していた。


竜二は「はいはーい!」と言って

「かーーちゃーん!!さんかげつごー!!」

と大きな声で叫ぶ。ビックリして振り向くと同時に僕は背中に冷や汗を初めて感じた、竜二の頭に錯覚を見たんだ。


そして角から曲がってきたのは竜二ママ、早歩きで近くまで来ると

「病院で大きな声出さない!!」とげんこつを落とし会計受付にスタスタ戻っていった。


僕はその時ここで起きた色んなことにびっくりして何が起きたか頭の中で整理しようとしてたけど、でも竜二はたんこぶの出来るであろう頭も抑えず

!!」って言った!


そこは「痛てー!」じゃないの??と思った時 即座に

「そっちかい!」ってつっこんでしまい。ゲラゲラと笑けて他のことがどうでも良く思えた。

これが後に言われる 僕のツッコミの才能が開花した時である。(自分調べ)


その後、竜二と背中合わせの元のポジションに戻ったんだけど、突然妙なことを言い出したんだ。

「今日は何だかコントローラーが言うことを聞くぜ!」って

僕は「は?」って言った。どつかれてアホになったかと思ったけど、その後の対戦で全く歯が立たず逆に

【コントローラが言うことを聞かない】って言う気分を味わったんだ。

言い訳にしかならないけど。。。


その間 母さんはスーツ姿の背の高い外人としばらく喋っていた。残念だったね父さん。再婚かな?僕は母さんの味方だよ。まだまだかわいいんだから。おっとテーブルマナーや英語も覚えなきゃ。


いやいや父さんには感謝していますよ!レトロゲー本体を通信できるように2つセットで準備してくれてたなんてマニアだよ!


おかげで竜二と遊べたしね。そして僕は父さんの思惑通りレトロゲーにハマり大きくなりましたとさ。

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