第七話

「ということでざっとした説明はこれで終わりです。じゃぁ、活動自体は今のところはありませんので、これで……詳しいことは追々連絡します」と担当の先生が言って顔合わせは終わった。


 掲示係は文化祭の準備期間に掲示をする係の為今のところは仕事はないらしい。

 つまり、春川さんとこうやって話せるのはしばらくないと言うことだ。

 そうなると、春川さんと一緒にいる時間が少なくなり翔太とヤる可能性が出てくる。

 その為、なるべく翔太といる時間を減らしたいわけだ。

 だから、俺は………。


「先生、毎年、掲示は文化祭の準備期間だけで間に合っているんですか?」と質問をした。

「まぁ、間に合ってるって言えば嘘になります。いつもは結局ギリギリで間に合わなくて中途半端になりますが、別にそこまでこの係を本気でやる人はいませんので……大丈夫ですよ」


 なるほど、だったら………。


「なら、俺が今日から始めて準備するっていうのは?」

「別にいいですけど……ほんとにいいんですか?」と少し驚きの表情をする先生。


 正直、嫌だ。

 だって、これはうららとの時間が減ることを意味しているからだ。

 でも………。


「いいです」


 それ以上に俺は翔太に復讐したい。

 だから、そんな事どうでもいい。


 気づけば、俺の心は翔太への復讐一つに染まっていた。

 でも、それでいいんだ。

 俺は翔太に復讐することができれば他のことなんてどうでもいい。

 きっと今でも翔太はうららとしているはずだ。

 今は我慢だ………。


「そうですね。やる気があるんですね。わかりました」


 こうして俺は一人、少し早く、文化祭の掲示をすることになった。

 いや、一人ではない……。


「あの、春川さん?」

「ん?」

「春川さんも手伝ってもらえると嬉しい……んだけどどう?」

「え〜私……翔太といる時間が減るしなぁ〜」

「一人じゃ何とも出来そうにないんだ。たのむ、他に喋れる人いないし………」


 そんな困った俺を気遣い、春川さんは。


「仕方ないなぁ〜、丁度二人で話したいこともあるし、わかった!」とニコッと言う春川さん。


 俺は春川さんの弱点を知っている。

 それは『断れない』ことだ。

 なぜ知っているかというと翔太から『桜は頼まれると断れないんだよ。だから、桜のことを頼む』と言われたからだ。

 バカめ、ありがとよ。お前のおかげで春川さんといる時間が増えたよ。

 

 俺は笑顔で。


「ありがとう、助かるよ」と言った──。


 よし、また一歩春川さんに近づいた。

 なぁ、翔太? お前は自分から地獄へ近づいていることを早く気づいたほうがいいよ。



 頼んだぞ………耕平。

 早く、桜としないと、そういう関係にならないと俺はうらら先輩に飲み込まれてしまう。

 だから、少しでも早く俺は桜としたい。

 

「よし、みんな集まったな……」と先生は言った。


 結局俺は実行委員になることになった。

 

 耕平め……余計なこと言いやがって……まぁ、許すけどよ。


「では、委員長を………」


 先生は委員長は前へと言うと委員長が前に立った。


 それと同時に俺は目を大きく開けた。


「え……………」


 委員長は髪を払って、俺の方を向きながら……。


「はじめまして、実行委員長になりました上坂うららです」


 なんで、この人が………。


「私は実行委員として最高の文化祭を生徒会と目指していきたいです。その為にも皆様の力が必要です。なので、ご協力お願いします………」と頭を下げた。


 いるんだよ………。


 俺はその場で固まった。

 何も考えられなくなった。



 顔合わせが終わり、みんなが教室へ戻っていく中俺は一人その場で固まっていた。


 終わった……この悪魔と同じ委員会なんて………俺は逃げれないのか?


「あら、待っててくれたんだね。二人になるの……それにしても、私たちって運命? ってやつかな〜?」


 そんなはずがない………運命なんて……。


 俺は声を震わせながら「なんで、なんで俺とするんですか……あなたには耕平が……」


「ええ。そうよ」

「なら、なんで………」


 うらら先輩は俺の顎を両手で掴んで唇を近づけ、舌を絡めてキスをした。


 頭がボッーとする……うらら先輩としたい。

 そんなことを思ってしまった。


「ええ、私には耕平がいる。でもね? 私分かっちゃったの。耕平よりもたとえこの先もっと愛するものができたとしても、私はあなたの身体に一番恋をしていることを」


 そう、彼女は笑顔で言った。



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