第37話 神の降臨

 神子カイルの身体が眩く光り恐ろしくも美しい目が開いた。雷に打たれてもピンピンしており、雲がカイルの周りだけ避けて光りに包まれる。


『………ここは…下界』

 と喋りペタペタと自分の身体を触る。


『……ついてる…』

 と言い出した。

 そして青ざめ私達に気付く。

 バルトルトが私の前に出た。


「ちょっと!神様降臨したのに勝てないよ。バルトルトさん!腕輪を外して私が時間を稼ぐから皆を安全な場所へ…」

 と言うとバルトルトは怒る。


「アホか!何で俺の花嫁を置いて逃げなくちゃならないんだ!俺は冥界王に誓ったろ!?妻を守り一生愛すると!」

 そう言うとバプティスト様もアメリー様も立ち塞がる。

 炎を纏い威嚇し、アメリーさんは防御魔法を街の皆に施している。


 バルトルトは陣を描き始めた。


『成る程…私を降ろした者はそこの花嫁を奪い子を成したいと?………ていうか…なんと地味な娘!』

 となんか神様にまで言われる私!


 私は腕輪を外しパレスちゃんで威嚇すると


『…神竜か…しかし所詮霊体。浄化して天界へ送り私のペットにしてやろう』

 とパレスちゃんを見て笑う。

 げっ!と思い、私はババっと腕輪を嵌め直す。


『くくく!小娘!お前の夫の方が美しいではないか?そこの夫となら子を成してやってもいい!』


「は、はあ!?何言ってるんですか!?貴方男でしょ!?」

 と突っ込むと


『くくく!私は女神コルネット!!この器など簡単に造り替えができる!何故なら神ですもの!』

 と言うと光り輝き目を押さえたその後に神子カイルの身体は女に変わっていき、恐ろしいボンキュボンの美しい女神が現れる!!


「うわっ!女になった!!」

「す、凄え美人だ!!」

「あんなこの世のものとは思えない美女初めて見た!」

「確かにこの世の者じゃない!女神様だ!」

 と街の皆や信者が叫ぶ。


『ひれ伏せ!愚民達!!』

 と光の波が街の人を襲いそれを被った皆は地面にひれ伏し倒れた。アメリーさんが結界をなんとか私達の周りに貼って耐えた!

 でもヒビが入り苦しそうにする。


 バプティスト様は炎の竜巻で女神を襲うが簡単にかき消されてしまう!

 やはり腐っても神である。


『愚かな!神に歯向かうとは!』

 と笑いバプティスト様に指を向け指先から光が圧縮され一本の線になりそれは高速でバプティスト様目掛けてアメリーさんの防御壁を突き破り胸にささり彼はあっけなく命を落とした!!

 アメリーさんが叫び防御壁が崩れる。


 私は腕輪を外した。

 流石にパレスちゃんは怯えているけど私はバプティスト様の蘇生をする為手を添えるしかない。


 傷は直様塞がったがバプティスト様は気絶しているようだ。呼吸音がしてアメリーさんは泣いて側にいた。


 カッ!

 と陣を描き終わるとバルトルトは神を睨み


「人の結婚式をよくも邪魔してくれたな!?神だからと許されるものではない!!」

 と言うと


『ふふふ、怒る姿も美しい!その地味女より私のモノになれ!』

 と手を差し出すがバルトルトは黒い光を放ち魔力を放出し


『我はネクロマンサー!冥界の王たる者よ!我の声聞こえしなら今一度ここに現れ、我を救え!』

 と言うと地響きと共に陣が黒く光りそこから黒髪の長髪をした美しいなんか王様みたいなのが現れた!!


『わっ!冥界王ハデス様!!』

 と慌てて膝まづく神父。


『世をこの世に呼び出すとは何事か!?』

 と苛つきながらバルトルトを見る。


『冥界王ハデスよ…力をお貸しください!あの女神コルネットを退けたい!』

 とバルトルトは頭を下げる。自分で呼び出したのに。


『ほほう。ネクロマンサーが頭を下げるとはな!それに……女神コルネットだと!?』

 と女神を見ると


『成る程…器に入り聖女ではなくネクロマンサーを狙っているのか。この男好きの女神め!』

 と言うと冥界王様は


『ネクロマンサーよ。お前の身体を借りよう』

 とバルトルトに入り込む。


『グアっ』

 と叫びバルトルトは黒い光りに包まれ繭になったかと思うとそれが弾けてバルトルトが更に美しくなりニヤリとした。

 まさか冥界王ハデスがバルトルトの中に入るなんて!!禍々しい光と神々しい光が睨み合う。


『冥界王ハデス!邪魔をするな!』


『生憎、呼び出されたのでな!…地上の民を苦しめるなど神の所業ではない!この邪神が!』

 と煽るハデス様。


『己!邪神だと!?このコルネットによくも!!ハデス!その身体を返せ!地上の民は私のモノだ!!』

 と手を出してはまた指を向け光を放つ!!


 しかしそれを止め黒いモヤで包み消してしまうハデス様!!


 そしてハデス様が


『愚かな女神に地獄の鉄槌を!!』

 と地面から巨大なる黒蛇がコルネットの足を掴む。


『放せ!』

 と蛇を消そうとしたが…ニュルニュルと女神の身体を沢山の蛇が這い回り女神がゾッとして


『ぎゃあああ!!気持ち悪い!!辞めろおおおお!』

 とヌルヌル蛇が全身を覆い尽くす。

 逃れる事のできないコルネット神に噛みつくと


『ぎゃあああ!』

 とついにカイルの身体から抜け出したコルネット神。カイルの身体は元に戻り、カイルは白目で気絶していた。蛇に噛まれた所は黒い蛇の刺青となっている。


『くく、その神子は我に呪われた。もう身体にも降臨できん!コルネットよ!お前も反省してさっさと天界に引き上げろ!!今日はめでたい日だ!天へ帰れ!!』

 と威圧するとコルネット神は


『ちっ!ハデスめ!!覚えてらっしゃい!!』

 と光輝き天へと帰って行った。

 街の皆は


「おおおおっ!すげえ!!」

 と街の皆は歓声にあがる。

 ハデスはバルトルトの身体から抜け出す。バルトルトも意識がなく私は慌てて支える。

 するとハデスがゴソゴソと何かを出した。


 それは闇色のピアスでこちらに投げつけた。


『結婚祝いだ!!…一度ネクロマンサーの召喚に応じた者は誰であれそいつが主人となる。この冥界王の主人となるに相応しきその男の身を守り、そこの神子にも負けぬ絶対の闇の力を与えてやろう!感謝しろ!!』


「わ…ありがとうございます!夫に代わりお礼を言います!」


『何…聖女よ。それではあの神子は神殿に放り投げてくるからお前達は式を続けてさっさと子を成せ………では我は…冥界へ帰還する。…仕事せねば』

 とちゃっと陣に入り消えていった。神子は神殿へと黒いモヤに運ばれていった。


 歓声が上がりバルトルトもバプティスト様も目を覚ました。


 バルトルトは手の中のピアスを見てそれを耳につけた。少し血が飛び散った。


「……魔力が…」

 と言うとバルトルトの守護霊の小さな蜥蜴がむくむくと大きくなり、黒竜へと進化した!!

 驚きの中、皆はこの様子に拍手した。


『式を再開しますぞー!』

 神父が手を叩き式は続行する。バルトルトに散った少量の血を私は綺麗にして耳から少し出ていた血も治してあげると手を取られキスをされ、見つめられる。


 ヴェールをあげにこりと微笑むバルトルト。


「やっとお前を守れたな」

 と言うのでおかしくなる。助けたのはハデスだけどもうそう言うことにしておこう。


『では、誓いのキスを!』

 と神父が言い、バルトルトは少し照れて私に熱いキスをかまし…皆から野次が飛び冥界王から祝福された。地面から黒い薔薇がニョキニョキ生えてきた!

 それがアーチ型になり私達はそこを潜り皆から紙吹雪やら花びらなどを投げつけられたのだった。


 パレスちゃんもその後空に咆哮したり飛んで街の皆や霊達も騒ぎ一気にお祭りモードになった。


 とんでもない結婚式だったが幸せだ。

 雨もパラパラと降ったが皆は濡れながらはしゃいでいた!!


「ヨハンナ…これからずっと一緒だ」


「はい、バルトルトさん」

 と手を繋ぎ私達は笑い合った。

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