第27話 金貨と銀貨

 俺は墓地へ赴き、暴れまくる悪霊達を発見した。

 管理者のおっさんが言う奴等だな。

 成る程、元盗賊団かなんかの悪霊だな?側の墓の普通のゴースト達を虐めている。


『けははは!おらおら!踊れ!歌えええ!!』

 と頭領らしき奴が命令し子供の霊が怯えていた。



『おい!貴様ら!ここは墓場だぞ?静かにしたらどうだ!?』


『ん?何だあ?人間!?ひっ!』

 と下っ端の盗賊の霊が俺を見てビビった。


『お前…ネクロマンサー!?』


『そうだ…観念するんだな?苦情が出てる!』

 俺は陣を描き唱える。


『迷える悪の魂よ!!冥界へと堕ち死しても罪を償え!!』

 と唱え悪霊達だけ陣の中へ吸い込まれて行く。


『んぎゃあああ!!チックショー!!ネクロマンサーめえええええ!!』

 と叫びながら負け惜しみの様に消えて行く。


 子供の霊達が寄ってきて


『お兄ちゃん!ありがとう!あっ!よく見たら顔凄いかっこいい!!』

『本当だ!カッコいい!!』

 と言う。


『うるせえ!あんま見んな!!』

 と霊の子供相手でも大人気なく言う。


『ともかく静かになって良かったな!時期にお前らの家族も花持ってやってくる様になるぜ』


『うん!ありがとう!!天国に行けるまで僕もう少しここにいるよ!!お兄ちゃん!!』

 にこりと笑われて少年の霊と別れて俺は管理人に終わったと告げ久しぶりにまともに報酬を貰った。

 銀貨5枚だった。

 まぁ、こんなもんだよな。

 …ヨハンナなの奴はもっと貰ってるのか?くそー。


 宿に帰る前に広場の掲示板でなんかないか探してみる。


 ー迷子の猫探しー

 ー蛇の駆除ー

 ー男娼募集ー

 ー皿洗い募集ー


「ろくなのねーな!!賃金も銅貨だし!!」

 ー魔女の図書館の整理ー

 金貨1枚。


 とある紙をベリっと剥がした。


「まぁマシな方だな」

 魔女の本は呪いがかかったものが多いしそれなりに普通の奴に扱いは難しいからな。金貨1枚ならまだマシ!


 と思って宿に帰ると先に帰っていたヨハンナがなんかソワソワしていた。


「お、お帰りなさい!」


「おう…どうした?」


「いや、なんでもないですよ?へへ!」

 と言うから不審に思う。


「おい?そういえば仕事はどうだった?」


「ああ、うん!ちゃんと魔力量測ったけど測定器…こ、壊しちゃって…お金はいいって神官長様言ってくれて、…まぁ、後は普通に今日の患者さんの治療手伝ってきた」


「ふーん…報酬は?」

 と聞くと明らかに態度が変だ。


「し、小銅貨かな?」

 と目を逸らしてポケットに手を突っ込んだままだ。俺はため息をついた。

 ヨハンナを壁際に追い詰めて下から目を見つめるとこれに弱いのかヨハンナが必死で目を逸らす。


「ヨハンナ?本当は?」

 と言いつつポケットに入れた手を掴むと


「うう…うううう!」

 と唸る。俺に怒られると思っているな。そんなに稼いだのか。


「怒らないから出してみろ!?」


「は、はい…」

 おずおずと差し出したのは金貨一枚だった。


「……ふーん。頑張ったな」


「あれ!?怒らない?いや拗ねない?」

 と言うから


「お前…何なんだよ?怒って欲しいのか?沢山の人を救ってきたんだろ?しかも俺に遠慮して金貨1枚なんて持ってきやがって!!本当はもっと貰ったんだろ!?」

 と言うと驚き


「凄い!!バルトルトさんて心読めるの??」

 と聞くから呆れる。


「は!お前の間抜けな顔見てたらそんな事わかるわボケェ!お前の魔力量が凄いことも俺は知ってる!金貨1枚な訳ねえ!」


「そうですか…。バルトルトさんの方は?」

 俺は潔くバンと机に銀貨5枚を置いた。


「負けだ。1日目は。明日は魔女の図書館へ行き整理する仕事が掲示板にあったからそこに行く。報酬は金貨1枚でまたお前には負けるけどな!」

 と言うと机の銀貨5枚を見てヨハンナひにこりと満面の笑みをした!

 は??


「バルトルトさん!!これ!!凄い!ちゃんと働いてきたの私初めて見たかもーー!!きゃーー!!凄い凄い!!」

 と飛び跳ねた!!

 バカかこいつ!俺は負けてんのに!!


「これ私のと取り替えましょうよ!」


「はあああ!?勝負してんのに何言ってんだお前は!!」


「そんなのどうでもいいでしょう??お疲れ様!バルトルトさん?肩凝ってない?治しますよ!私!まだまだ魔力余ってるし!!」

 とにこにこじゃないか!!


「…はぁ…変な奴だな。なんかバカらしくなったな。勝負も」


「でしょう?やめて二人で普通にお金貯めておきましょう!!暮らしに困らないなら充分です!改築が終わったらまた森の家に帰りましょう!」

 とヨハンナは言う。なんか…やっぱり

 俺…こいつのこと…


 ソファーに座り俺はヨハンナを抱きしめた。

 ヨハンナの匂い…嫌いじゃない。


「お前の方が沢山仕事をしたんだ。あんまり俺を褒めんなよ」


「う…。まぁ…皆とても喜んでくれてた…」


「そうか…良かったな!」

 俺は顔を上げて笑う。赤くなったヨハンナの顔が見れた。


「はい!バルトルトさんも悪霊追っ払えたんですよね?怪我はしてないですよね?」


「大丈夫だ、被害にあってた普通の子供の霊がお礼言ってきたくらいだけどな」


「じゃあ、バルトルトさんも人助け、いや、霊助け?ですね!!」

 とヨハンナも笑う。コツンと額をくっ付けクツクツ笑い合った。


「それにしても…教会の奴等お前の力に驚いてなかったか?」


「ああ、確かに。なんか普通は時間かかるのにとか…私すぐ癒しちゃうから…教会で一生保護とか聖女様にーとか言われたけどそんなのになりたくないしバルトルトさんとけ、結婚したいし私!」

 と最後の方は照れるヨハンナ。

 しかし…やっぱりな。教会の奴等に目を付けられたか…。

 明日から影に見張らせるか。

 と決める。


 俺はヨハンナにチュッと短いキスをした。

 それだけでヨハンナは真っ赤になり可愛くなる。俺も前はこんなこと出来なかったのに相手がヨハンナだとついつい甘くなる。


「そろそろ夕飯に行くか?ちょっと美味しい店を見つけた。宿の飯も美味いがな、たまには」

 と言うと照れながら


「そ!そうですね!!」

 とヨハンナは立ち上がる。

 二人で手を繋ぎ夕飯を食べに行く。

 何かの視線を感じる。やはり教会の奴等か。

 はぁ、めんどくせえな。


 ドスっと視線を放つ男の近くの影を操り牽制した。影で文字を壁に書いた。


 ー彼女に手をだすな!ー

 と。

 男は驚き逃げて行った。

 どうするかな…。

 あいつら簡単に諦めないかもな。


 夕食の席で俺は言う。


「なぁ、ヨハンナ」


「なんですか?バルトルトさん?」

 側にあった酒をグビっと飲んだ。こんなこと酒の力でもないと言えん。


「まぁ、お前も飲め!」


「えっ?私そんなに飲めないでしょ?」


「いいからいいから!」

 と勧めた。

 初仕事祝いだと言いたらふく酒と料理を飲ませて…宿に戻る。


「うへー!満腹で眠いーー!」

 とゴロリとベッドに横になるヨハンナ。

 俺もそれを見てとりあえずヨハンナの上に乗った。


「はへーー?」

 とヨハンナが赤い顔のまま見た。


「バルトルトさん…カッコいい…カッコいい…」

 とうわ言みたいに言う。


「悪いけどヨハンナ…明日はお前は仕事に行くな」


「え?なんれ?お金…」

 と言う口をキスで塞いだ。

 要するにヨハンナはあいつらに狙われている。奴等の巣に無防備に行かせることはできない。


「金は俺が稼いでくるからお前は明日ずっと寝てろよ?足腰立たなくなるまでしてやる!」

 と言い俺はその宣言通りに愛した。

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