第8話 ベッド作り

 次の日から…ベルトルトが


「お前のベッドを作る」

 と言い、森へ木を取りに行くと言う。しかし


「あのお…でも、どこで私は眠るのです?ベッドを作っても置き場は?この家狭いしそんなに大きいもの置ける位置も限られてきます。部屋だって無いし」

 と言うとあっさり


「俺のベッドの横に少し余白がある。そこに新しいベッドを置けばいい」

 とか言い出した。

 えええええ!?余白ってもほんとベッド一つ分は置けるけどマジでピッタリギリギリよ!?

 この人本気なの?ええええ!?


「何だ不満か?部屋を増設するには流石に俺でも時間がかかるんだが」


「そこは大工さんとか呼びなさいよぉ!!」

 と言うと


「嫌だ、人は嫌いだ!」

 と文句を言いながら森へ木を切りに行った。カンカンカンとかバキバキとか木を切る音も響いて来た。

 マジでベッド作る気なんだ!!


 お昼になると戻ってきて昼食を食べた。


「順調なの?手伝いましょうか?」

 と言うとバルトルトは首を振る。


「女の手なんか借りるか!力仕事だしな」


「ええ?バルトルトさんが力仕事なんかほとんどできないでしょ?どうせ影とか死霊を呼び寄せて手伝わせてるんでしょ?」

 と言うと


「な、なぜわかる!?」

 と焦った。わかるわ!このもやし!!


「明らかに涼しい顔をしてるから!全く!でも魔力は消耗するでしょうから夕飯は美味しいものを作りますよ?」

 と言うと彼はモゾモゾと


「コロッケ食いたい。後、ハンバーグも」

 と言った。


「わかりましたよ。コロッケとハンバーグですね。作っておきます。バルトルトさんも頑張ってくださいね」

 と言うと彼は


「わかった。頑張る…」

 と立ち上がりまた森へ向かった。

 心なしか浮かれているようだ。


 それから夕方になりバルトルトさんが影で作った新しいベッドを運んできた!!


「うわっ!!本当にベッド作ったんですね!!凄い!!」

 簡単なベッドだがちゃんと組み立てられている。影の魔術を使いまくり彼の隣の隙間にドスン!とベッドを置いた。


「よし…」

 と言い私を見て


「後はお前の布団を敷いておけ、今日から使えるぞ」

 と言う。なんだかちょっと恥ずかしくてこそばゆい。この人が私に手を出すなんてまだ考えられないから安心とは言え、年頃の男女がすぐ隣で寝るなんて本当に夫婦みたい!!


「あっ!!そうだわ!」


「何だ!?」


「ここ!!天井に布を垂らして仕切りましょう!」


「……仕切り布か…そうだな。いるな…。じゃあ、お前が料理並べてる間に垂らしておく」

 と彼は倉庫に大きめの布を持ってきて天井から影をまた使いカンカンと釘を使い布を止めた。

 仕切りも完成してしまった。


 まぁこれで少しマシな方ね。


 二人でベッドの完成祝いをした。


「ありがとうございます!!」


「ああ、疲れた。別に礼はいい。今までテントで寝かせていたからな」


「まぁ、最初はバルトルトさんの警戒心はMAXでしたからね!!今は凄くマシになって良かったです!」

 と料理を食べる。

 バルトルトは好物のコロッケを口に入れちょっと幸せそうだ。


「お前のモノは毒もないし美味いからいい…」

 とボソリと言った。


「当たり前でしょ?そんなの入れるわけないでしょ?」


「ああ…そうだな…」

 とバルトルトはそう言うとホッとしたように黙々と食べた。


「でもやっぱり仕事はきちんとしてお金を入れてくださいよー!?」

 と注意すると


「わかってる!ちっ!仕方ない。街に行って求人を探すか…」

 と言ったので


「わぁ、街?」


「……行きたいのか?あんな所」


「当たり前です!一緒に行ってもいいんですか?」


「…来たいなら勝手にしろ。だが、街は怪しい奴らも多いから注意しろよ。怪しい薬を売りつけたりする奴も多いし、危ない人攫いだっている。俺は髪が伸びてた時は素顔も隠れていたし襲われたことはないが」

 と言うが、髪伸びてた時のバルトルトも怪しい奴扱いされてたんじゃないの?と思いおかしくなった。


「何だ?おかしなことを言ったか?」


「いいえ、楽しみですね街!私あんまり行ったことなくて」


「お嬢様だったからな…」

 それを言うなら貴方も過去たぶん高貴な方だったろうけど私よりぼっち生活は少し長かったようですしね。


「そうか、街へ行くならデートですね!バルトルトさん!」


「は?デート?」


「デートくらい知ってるでしょう?バルトルトさん私に恋を教えて欲しいなら…ときめくチャンスですよ!」


「と、ときめくチャンス?」


「恋というのは!一緒にいるとドキドキしちゃってその人の事を考えると夜も眠れなくなるもんなんですよ!」


「ほほう、お前と一緒に暮らしてるが全然ドキドキもしないし普通にぐっすり眠れるが」


「だからそれ全然私のこと恋愛対象として意識していないってこと、つまり恋をしてないんですよ!街へ行って普段と違う環境に身を置いたら多少は何かあるかもしれません」


「何もない場合もあるよな?」


「いちいち否定しない!そんなだから素直に恋できないんですよ!」

 と言うとうーんと腕を組み


「わかった…努力する……。美味かった。身体を拭いて寝る」

 と桶を持ち水場に向かっていった。

 へー、努力ねぇ…。


 *

 頭からバシャりと水を被り軽く頭を洗い身体も綺麗にして俺は寝床に向かう。布が垂れ下がり仕切られた向こうにベッドの布団を入れるヨハンナの影が見えた。


 昔は女に襲われて俺の心は殆ど死んでいた。

 おぞましい行為も吐き気を催すだけだったし…気分は悪かった。


 ヨハンナは自分も水場に行った後さっぱりして布の向こうに消えた。

 何となく落ち着かない。そりゃ、今まで一人で寝ていたしな。ヨハンナが俺に何かするなんて思ってないし安全な女であることはもうわかった。口煩いけど俺が嫌がることはしないだろう。


 しばらくするとスウスウと寝息が聞こえた。

 嘘だろ?もう寝たのか?早いな!!


 いや、俺も寝るべきだ。明日デートとやらをしなくてはならない。そんなの一度もした事がない!若い恋人同士がするやつだってのはわかる。だが…よくわからん。

 ドキドキもどうやってするんだ?わからん。


 悩みながら俺は眠った。


 *

「何ですって?お姉様が…生きていたですって?」

 密かに調査に出させていた男が戻ってきて報告した。

 男は金を数え


「ああ、森の中の小せえボロ小屋で顔のいい男と一緒に幸せそうだったよ」

 と男は言う。


「な、何ですって?顔のいい男と一緒に住んでる!!?に、憎たらしい!!」

 まさかあの状態で生きているなんて!!よもや機会を狙って私に復讐するのかもしれない!!


「許せない…お姉様を殺してくれたら…倍のお金を出すわ!」


「了解!お嬢様!…で、男の方も殺すのか?」


「いいえ、連れてきて地下室に監禁して?お姉様のモノだったのなら私が奪ってあげるわ!!ふふふふ!」

 とローレ・マリーナ・ダイスラー伯爵令嬢は笑い、寝室に戻ると眠っている婚約者の横に滑り込み眠ったのだった。

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