清雨の結婚式


 雲の隙間から太陽が顔を出す。太陽の光を浴びて、輝くキコちゃんはいつも美しいが、今日は一層美しい。


「キコちゃん、綺麗だよ」


 僕が思わず声をかけると、キコちゃんは照れたように顔を反らした。


「……センくんも、恰好いいよ」


 キコちゃんの思いがけない言葉に、顔が熱を帯びるのを感じる。可愛い。可愛すぎる。いつもはツンツンと素っ気ない彼女からそんな言葉が出るなんて……!


「き、キコちゃん……!」


 思わず抱きしめようとするのをキコちゃんは避ける。


「だめ」

「……くうん」

「かわいこぶってもだめ。……式が終わったら、ね」

「……!キコちゃん!」

「あーはいはい、抱き着こうとしない!」


 ああ、キコちゃんは可愛いなあ。僕は本当に幸せ者だ。とっても可愛いキコちゃんと結婚できるなんて。


「ほら、行くよ。皆待ってる」

「うん」


 僕たちは並んで、扉を開ける。そこにはたくさんの仲間や友達が迎えてくれた。彼らは思い思いにヤジを飛ばす。


「結婚おめでとう!」

「よっ!幸せ者!」

「キコちゃん泣かしたら承知しないからな!」

「おい!僕がキコちゃん泣かすわけないだろ!」


 最後のヤジにすかさずツッコミを入れると、ドッと笑いが起こった。

 僕らは指輪を交換して、近いのキスを交わす。キスは初めてではないのに、目を閉じるキコちゃんは美しくて、僕はやっぱりドキドキしてしまう。

 太陽や雨も僕たちを祝福しているようだった。雨粒が太陽の光を反射して、キコちゃんの周りがキラキラと輝く。少し眩しいくらいに。ああ、こんな絶好の天気で結婚式ができるなんて!僕は幸せな気持ちで花嫁姿のキコちゃんを見つめた。






「おじいちゃん、晴れてるのに雨が降ってるよ。何で?」


 男の子が隣にいたお爺さんに問いかける。お爺さんは空を見上げて呟いた。


「ああ、これは狐の嫁入りじゃ。狐が結婚式でもやってるんじゃろう」


Fin.

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