第二十九回 ある意味では対面。


 ――怜央れお君と太郎たろうさん。


 一見、何の脈絡もなさそうな二人に何があったのか?



 それどころか師弟関係が浮き彫りになるの。喩えるなら、先程のお婆ちゃん。瑞希みずき先生のお母さんだ。この二人からも滲み出る師弟の関係……ただの母と娘の関係ではない。


 ここでリサーチ。……というよりも、可奈かな先輩の知識が九割以上を占めていた。流石は情報通な御人。彼氏ができても健在だ。――少しばかり遡る。怜央君が千佳ちか先輩と出会ったことが始まりとなる。……それにしても千佳先輩は、何でか縁の中心にいつもいる。


 不思議な人だ。或いは何か持っているかも?


 まあ、その論議は、また今度ということで……怜央君が太郎さんにお願いしたそうらしいの。「強くなりたい」と、その理由を掲げて。


 原因は、

 ……これもまた千佳先輩なの。


 怜央君が、水泳部の先輩たちに過酷ないじめを受けていたことで、千佳先輩が単身、その水泳部の先輩たちと対決。上からも下からも泣いちゃうほど怖い目に遭うも、その動かぬ証拠を瑞希先生に提示したことで、一網打尽に……できたのだけど、怜央君は自分を責めた。――もっと僕が強かったら、千佳先輩を怖い目に遭わせずに済んだと。


 だから、初めはお詫びの心構えだった。千佳先輩には彼氏がいて、その人こそが太郎さんということを知って……謝りに行ったそうなの。太郎さんの学校の、その教室まで。


 そして太郎さんは言ったそうだ。


「反省はいらないし、自分を責める必要もない」……と。その言葉に怜央君は驚いたという。――この人は、千佳先輩をどう思ってるんだ? 心配じゃないのか? と、そう思っていたそうだ。だけど次の瞬間だ。……「千佳なら、そう言うだろう。自分が強くなればいいんだから」と。その言葉に、怜央君は涙したそうだ。そしてまた、僕も思ったの。


 ――千佳先輩のように強くて、カッコよくなりたいと。



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