第二章 ――進撃。

第六回 その巨人ではないけど。


 ――それでもアニメは大好き。特に『進撃する巨人』


 でも、どちらかといえば小人。まあ、まだ成長期だから御心配なく。



 同じクラスの都築つづき玲央れお君は、僕が正式に芸術部の部員になったのと、ほぼ同時期。初めて僕に、同期ができた瞬間だ。……ある程度は予想されていたと思うけど、僕はあまり話しかけたりはしないタイプだ。都築君も、僕と同じく大人しいタイプ……


 何でかな? いつ頃からか僕は……彼に話しかけるようになっていたの。


 身長は男子の中では小柄な方だけど、僕から見たら大きいの。因みに僕の身長は百四十センチ未満……でも、もうすぐなるんだから。身長も伸びているんだから。


 ……まあまあまあ、僕は大きな眼鏡で色白の、お下げのモブな女の子で……だから芸術棟の二階で、唯一アトリエで、一糸まとわぬ姿となる。令子れいこ先生もそうしてきたように僕も、彼女のように――自分に自信を持てる自分になりたいから。



 そして僕は、

 君にも自信を持ってほしいの。……いつの間にか、そう思っていたの。


 なぜなら男子で君だけが、僕の……その、ありのままの姿を。一糸まとわぬ姿をアトリエで見ちゃって、知っちゃっているから。だから、その日その時からかな? 僕の描きたい絵が決まった。男子にしては綺麗な顔立ち。イケメンというより……本人も気にしているのだけど、可愛い系。でも、体つきは意外とガッチリで、僕の顔が赤くなるほど。


 同じクラスでも、この時までは言葉を交わさずに、

 同じクラブでも、この時までは言葉を交わさずに、


 挨拶でも囁く程度で……でも、今この時、僕は全部が見えちゃっているにも関わらずに初めて言葉を投げる。彼……都築君に対して。


「僕のモデルやりなさいよ、僕の……見ちゃったんだから、そうでなきゃ不公平でしょ」


 と、いきなりの大きな声。気まずいお互いだけど、きっと、その向こう側では……



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