第一章 その二十 ヒイラギボウキ

新屋敷の説明。


「まぁ今までの流れで坂田さんも分かったと思うけど、コマルの爺ちゃんもハナイチも『鬼倒士』っつうヤツでな。知っての通り鬼をブン殴れるチートクラスの霊能者の類さ。

正直殆ど絶滅しててな、俺の情報ではもう今は『ハナイチしか居ないもんだと』思ってたんだよ。だからコイツ(ハナイチ)もびっくりしたんだよ。


コイツ(ハナイチ)は霊だの鬼だのをブン殴るしか能の無いヤツだが、本来の鬼倒士ってのはそれ以上にやる事がいっぱいあるそうなんだ。それこそ神社の宮司みたいな事やったり、祭りの仕切りやったりね。コマルが言ってる『おっきいガサガサ』ってのは『柊箒(ひいらぎぼうき)』の事じゃねぇかな。


俺も聞いた事あるくらいで実際見たわけじゃないんだけどさ、ヒイラギの葉っぱっつのは昔っから邪気を祓うって言われてんの聞いた事ないか?ほら、イワシの頭ぶっ刺して玄関に飾るとか。・・・知らない?なんかあるんだよそういう風習。


通常は『邪気が入って来ないように』ってヒイラギを家の垣根に使ったりするんだけど、柊箒ってのはヒイラギを束ねて作るでっかいホウキみたいなヤツなんだってさ。これね、昔の鬼倒士は武器にしてたらしいんだよね。


察するにコマルの爺さんが鬼倒士だとしたらコマルの村の祭りには柊箒を祀る風習が残ってて、それを作るのが爺さんの仕事だったんだろう。村の人達が大騒ぎで爺さん探したって話からすると、村じゃ鬼倒士自体も案外メジャーで重要視されてたっぽいな。それか、


『柊箒が無いとマジで困るくらいの事が起きる』のか。だな。」


私に分かるように話す新屋敷の顔をじっと見ていたコマルはそこで一言、


「うん、鬼だらけになるんだって。」


と実に軽く嫌な事を言った。

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