第2話 勝負スタート

 家に着くなり部屋に案内され、黒内の部屋をキョロキョロとしているウチ。


「漫画だらけやな」


「読んでもいいわよ」


「いや、今日はやめとく。あんまり時間も無いし」


「そう。そこに座って」とクッションを指さす黒内。


 ベッドにもたれるようにして、クッションに座る。


「え、ちょっ!」


 黒内はあぐらを組んで座っているウチの足の上に乗ってきた。ウチの足に伝わってくる黒内のお尻の感触。目の前に黒内の顔がある。


「どうかした?」


「別に!」


 ふふ、と笑みを浮かべ黒内の顔が近づいてくる。


 ボールを持つみたいに顔を持たれて、ちゅ。


 軽くキスをされた。


「なっ...!」


「あら、顔が赤いわよ?」


「いきなりそんな事するからや!」


「そんな事?」


「今したやろ!」


「何を?」


「...ちゅーしたやん」


「嫌だった?」


「...別に」


 なんでこんなドキドキせなアカンねん!いきなりそんなんされたら誰だってビックリするやろ。

 そうや、これはビックリしてドキドキしてるだけや。


「もう帰る!」


 黒内をどけようと腰に手を当てる。


「あっ...」


「変な声出すな!」


「叶彩に触られちゃった」


「ヘンタイ!」


「夏休みまでに私を好きにさせないといけないから、手段は選ばないわよ。それとも...やっぱり自信が無いのかしら?」


「全然余裕やけど」


「そう、ならこれから私の家にいる時は好きにさせてもらうわね。何されても余裕なんでしょ?」


「当たり前や!」


「はい、約束」と言って指切りをする。


 絶対負けへん、ちゅーくらいなんや。相手は女の子や何も気にする必要ない。いつも朱音がベタベタひっついてくるし、それの延長みたいなもんや。


 ちゅ。


 その後も何度も軽いキスをされた。


 黒内の柔らかい唇の感触が何度も何度も伝わってくる。


 時にはほっぺたに、時にはおでこに。


 何度も何度も。


 黒内の唇の感触にハマってしまいそうだ。


「ふふ、かわいい」


「うるさい」


「今日はこのくらいにしておきましょうか」


「え...」


「ん?」と薄く笑う黒内。


 なんや、えって!ちょっと残念とか思ってしまった!


「この感じだとすぐに落とせそうね」


「そんなわけないやん」


「ふーん」


「帰る!」


「また明日ね」


 時間も時間だったし、黒内は何の抵抗も無く立ち上がった。


 靴を履いて送ってくれようとした黒内に「1人で帰れる!」と言って走って帰った。


 家に着くと部屋に行きベッドにダイブした。


 ああああああ!

 おかしいおかしいおかしい!

 あれ?ウチって男子が好きなんやんな?いや、今まで誰か好きになった事ないし分からんけど...いやいやいや!

 黒内にちゅーされんの嫌じゃ無かった...。黒内の唇柔らかかったな...。


 こんなん考えてたらアカン。


 黒内のペースになってるやん!何も考えるな!


「よし、ちょっと筋トレしよ」



 次の日の放課後。


「朱音、紫織、どっか寄って帰ろーや」


「ごめん〜!今日休んだ子の代わりにシフトに入ったからバイト行かないとなの」


「私も用事あって帰らないとダメなんだ」


「じゃ、叶彩。私と遊びましょう?」


 げっ。

 いきなり黒内が話に入ってきた。


「あれ、叶彩。黒内さんと仲良くなったんだ〜」


「珍しいね、黒内さんが話すなんて」


「まあ、いろいろあって」


「ヤバい!バイトに遅刻しちゃう。じゃ叶彩、また話聞かせてね」と言って朱音が紫織と一緒に帰って行った。


「じゃ叶彩、行きましょう」


「...うん」


 嫌でも昨日の事を思い出してしまう。


 黒内の部屋に着いた。


 昨日と同じ事にならないようにしないと。


「漫画読ましてもらうで」と言って何冊か取った。本を目の前に持ってきて黒内を前にこさせないため。クッションに正座で座った。


 30分くらい漫画を読んでいた。これ百合漫画やんけ!

 ただ、意外と面白い。


 黒内も少し離れて漫画を読んでいた。


「飲み物取ってくるわね」


「んー」と軽く返事をして漫画の続きを読む。


 アカン、足が痺れてきた。

 黒内が出て行ったのを確認してあぐらを組む。


 帰ってきた黒内は隣に座った。


「...」


 何かされるんじゃないかと身構える。


 ちょん。と足をつつかれた。


「っ...!〜〜!」


 つん。


「ああ!.........何...すんねん!」


「ごめんごめん、つい...ね」


 くっそう。

 また黒内のペースになってしまってる。


「思っていたのだけれど、スカート短すぎない?」と言って太ももに手を置いて優しく撫でてくる。


 動じるな動じるな。

 普通にしてればいい、何とも無い。


「この方が涼しいねん、ウチ暑がりやし。スパッツ履いてるしパンツ見られる心配ないで」と言ってスカートをヒラヒラする。


「へぇ」と言って目線を下の方に移す黒内。


「お茶もらうで」


 漫画を置いてお茶を飲む、飲み干す。


「そんなに喉が乾いてたの?それとも緊張してたのかしら」


「暑がりやから」


 じーっと見つめてくる黒内。


 相変わらず綺麗な顔してるな。

 人形が生きて動いてるみたいな感じや。


 横に座っている黒内の太ももと並べて「白いなー」と言って太ももに目線を移す。


「もっと見ていいのよ?」と言ってスカートをギリギリまでめくる。


「ヘンタイ!」


 目を逸らす。


 その隙にまた膝の上に乗ってくる黒内。


「ふふ、座って欲しかったんでしょ?」


「なんでやねーん」


「私が飲み物取りに行っている間に足組み替えてたじゃない」


「そんなわけないやーん」


「...」じーっと見てくる黒内。


 よしよし、いい感じや。

 思い通りになると思うなよ、黒内。


「悪い子ね」


「わるい..んむっ」悪い子?と最後まで言い切る前に黒内の唇で口を塞がれた。


「んっ」


 黒内の舌がウチの歯茎をゆっくりとなぞる。息を整える間もなくウチの舌に絡めてくる黒内。


「んっ〜!」


 押し返せばいいだけやのに...なんか...力が抜ける。


 なんで...。


 ...気持ちいい...。黒内の唇...それに、舌も絡み付いてくる...。


 優しく絡められる、時には激しくウチの口の中を黒内の舌が暴れ回る。


 ぷは。


 とても長いように感じたキス、昨日の軽いキスとは全然違う。長かったように感じたキスが終わってみるともう終わってしまったのか、と思ってしまう。


「素っ気ない返事はお仕置きよ」


「わ、わかったから」


「いい子ね」と言いながら頭を撫でてくる。


「...」


「もっとしてほしい?」


「...ぜ、全然してほしくない」


「ふふ、かわいい。そんな顔して言われても、ねぇ」


 いったいどんな顔をしているんだろう。


 黒内が嬉しそうな顔をしているって事はきっとウチは...。


 だって、こんなにキスが気持ちいいなんて...知らんかったや。


 もっとしたいって思うやろ!


 でも、ウチもプライドがあるからな。したいなんて絶対言えへん。


 てか、なんで黒内はこんなにキスが上手いんや!?


「まあ、黒内がどーしてもしたいって言うならしてもいいけど」


「...」


 キョトンとしている黒内。


「な、なに?」


「誘うのが上手なのね」


「さ、誘ってへん!」


「はいはい、上手に誘えたご褒美にキスしてあげるわ」と言いながら頭を撫でてくる。


「だからさそっ...んっ!」またいきなり!


 ぴちゅ、ぴちゃ、と音をたて、必要に舌を絡めてくる。


 もう、何も考えられへん。


 黒内の唇、舌、息づかい。全てに集中してしまっている。


 黒内が少し口を離して、舌でウチの唇を舐めてくる。

 どれくらい舐められただろうか、長かった?短かった?もう分からない。1つ言えるのはもっとしてほしい。舌を絡めたい。


 そう思ってしまった。


 ウチは無意識で舌を出してしまった。


 黒内はそれを見逃さず唇でパクっとウチの舌を加えた。


 軽く吸ったり、黒内の唇で弄ばれる。


 無意識のうちにウチの手は黒内の体を抱きしめていた。


 もっともっとと欲しがるような。


「...」


 黒内がじーっと見つめてくる。


「...」


 ...ああ...アカン...。


 こんなん、クセになる。


「してほしい?」


「...うん」


 その後は口の中がどっちの唾液か分からなくなるくらい、口が心地のいい疲労感が出るくらいタップリとキスをした。

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