3-4 憧れと勘違い






・・・おかしい。絶対におかしい。





ん?何がおかしいのかって?

今、俺の目の前に広がっている光景がだよ!



「はい、あーん」


「あーーーん♪」


、おいし?」


「うん!おいしい!

 ありがと、!」


そう言って雪音さんがさしだしたフルーツを、舞香が嬉しそうに食べる。

ご覧の通り、この短時間で二人ともめちゃくちゃ仲良くなってやがる。


え?さっきの喧嘩って、なんだったの・・・






〜〜30分前〜〜





舞香と雪音さんは静かに互いを睨みつけている。すると、舞香が口を開いて


「ていうか、本当にアンタと俊介どういう関係なのよ」


そう問いかけるので俺から、

雪音さんが俺の中学の部活の先輩だということ、母さんが再婚し雪音さんが母さんと再婚した相手の子供だと言うこと、そして母さんたちから雪音さんが何も危害を加えられないように助けてやってと頼まれた事を舞香に説明した。


「・・・ふーん」


舞香が何かしら考え込んでいる。


「それで、貴方こそなんでいるのかしら?」


そういう雪音さんにも、

舞香が雪音さんが転校した後に父さんが再婚し舞香が義妹になった事、アイドル活動を円滑に行うために学校に近いこちらに住んでいる事を説明した。


「・・・へぇ」


雪音さんも舞香と同じく何かを考え込み始めた。


ていうか舞香が怒った理由はなんとなくわかるけど、なんで雪音さんは怒ったり、舞香に対抗したりしたんだ?もしかして・・・


おい、だから勘違いはダメだって。

雪音さんはそういうよく分からない人だったろ・・・



***



俊介がYukiとの関係を説明してくれた。

てことはYukiは俊介の義姉みたいな立ち位置になったって事よね。


ん?まてよ、部活の先輩?


私の女の勘が反応した気がする。


「ねぇ、前に言ってたキスした先輩ってもしかしてYukiのこと?」


俊介は私にそう聞かれると、Yukiの方をチラリと見て彼女が頷くと


「・・・あぁ、そうだ。

 だけど何かあったってわけじゃないぞ、そりゃその当時は告って振られたけど・・・」


「っ・・・」


「え?」


こ、告った!?

それは初耳なんだけど!

てか、なんで今Yukiちょっと反応したの?


けど、そうか。俊介もう振られてたんだ。

けどめちゃくちゃ羨ましいな。

私なら絶対振ったりしないのに!


まぁそれは置いといて、今の反応をみるにYukiの方は振ったことに関して何か感じてるみたいだけど、俊介の方は吹っ切れてるって感じがする。


けど、Yukiは何を感じたのかしら。

あ、確か俊介キスはいきなりされたって言ってたよね。

もしかしてそれに今更罪悪感でも芽生えてるって感じ?それなら私も似たような事をしたから分かる気もする・・・


うん!それなら、Yukiは大丈夫な女性だ!


それに私、お姉ちゃんって凄く憧れてたのよね。私が俊介の義妹ってことは、俊介の義姉なYukiは私の義姉でもあるってことよね?


それなら・・・



***


俊が斉藤舞香との関係を説明してくれた。

てことは、彼女はほぼ私と同じ立ち位置なのか。


でも俊と舞香さん一緒に住んでるって言ってたけど、見た限りは親密な関係ってわけじゃなさそう・・・


私なら・・・それはまぁ、今はいいわ。


てことは、彼女が怒った理由は大好きなお兄さんを見ず知らずの女にとられそうになったから、とか?


それだったらさっきのキスの質問も、お兄さんを悲しませた女は嫌いとかで説明もできる。


これが俗にいうお兄ちゃん大好き!ってやつ?え?何それかわいい・・・


それに俊の義妹ってことは、間接的に私の義妹でもあるってことよね。


妹にちょっと憧れてた私としては・・・



***



「「・・・」」


二人とも黙ったまんまで動かない。

少し心配になっていたら、


「「ごめんなさい!」」


「・・・え?」


二人同時に頭を下げて謝った。

思わず驚いて声でちゃった。


「私、勘違いしちゃってたみたいでYukiさんに酷いこと言っちゃいました・・・本当にごめんなさい」


「いや私こそ突然の事だったとはいえ、もう少し言い方を考えるべきだったわ。こちらこそごめんなさい」


「それで・・・Yukiさんって俊介のお姉ちゃんってことですよね。てことは私のお姉ちゃんって思っても、いい、ですか?」


「! 

 もちろんよ!私も今その事を考えてたの!

 昔から妹に憧れてたから、斉藤さんを妹と思ってもいいなら私もうれしい!」


「私、蒼舞香っていいます!

 舞香って呼んでください!」


「あ、自己紹介が遅れてたわね。

 私は新藤雪音よ。雪音でもなんでも好きなように呼んでね?」


「じゃあ・・・雪音お姉ちゃんって呼んでもいいですか?」


「うん!私は舞香ちゃんって呼ぶわね!」


そう言って二人ともお互いの顔を見てニコニコ笑っている。


「えぇ・・・?」


サッカー選手も驚きの展開の移り変わりの早さに俊介は戸惑っていた。だが、俊介はおろか渦中の二人でさえ気づいてはいない。


この変化は、二人の絶妙な勘違いから成り立っているという事に・・・




〜〜〜〜〜




そんな事があってこの状況に至ったというわけだ。まぁ、二人が仲良くなって良かったか。


この頃、絵梨花ちゃんと舞香のいがみ合いしか見ていなかったから、こんなやりとりは新鮮だな。


そう考えていたら、机に置いておいた俺の携帯が振動する。


「・・・げっ」


携帯の画面をみた舞香が声を上げる。

今のだけでみていなくても、相手は絵梨花ちゃんだとわかるな・・・


「ん?」


舞香の反応で雪音さんが携帯に気づいてじーっと見ている。やば、めちゃくちゃぼーっとしてた。雪音さんに見られちゃダメじゃん!


いや絵梨花ちゃんの芸名と本名は違う。

だったらバレてない・・・よね?


「・・・俊、もしかして女優の上坂絵里と知り合いなの?」


「・・・」


うわ、バレてたー!

寸分の狂いもなくバレてたー!


ん?でもなんで上田絵梨花と上坂絵里を繋がれたんだ?舞香でさえ無理だったのに・・・


「あー、はい。

 絵梨花ちゃんは俺の幼馴染なんです」


「・・・へぇ。まさか俊とが幼馴染だなんてね・・・」


ん?お嬢?

なにその物騒な雰囲気が漂う呼び方は。

お嬢=絵梨花ちゃん?全然イメージが出来ない、もしかして雪音さんは誰か他の人と勘違いをしているのか?


「というか、俊も呼び捨てでもタメ口でもいいんだよ?そんな他所よそしい関係でもないでしょ?」


「えっ、俺は・・・」


「そうだよ俊介!雪音お姉ちゃんがいいって言ってるんだからそうしなよ〜」


いや、そんな突然呼び捨てとか無理じゃない?

でも、二人の美少女が俺を見つめながらしろよと言ってくる。こんなの、しないわけにはいかないじゃん・・・


「ゆ、雪音・・・ねえさん」


なんか恥ずかしくなって変なところに着地してしまった!恥ずい!やばい顔から湯気でそう!


「・・・ふふっ。

 俊は相変わらず恥ずかしがり屋さんだね。

 まぁ、よく出来ました」


そう言って笑いかけてくる雪音姉さん。


このやりとりで改めて俺は理解した。

あの憧れだった雪音さんは、

本当に俺の家族とも言える存在になってしまったんだな・・・



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