一章 義妹と幼馴染

0-1 出会いと始まり







 ま、眩しい……


 夏休み中で学校が休みというのに珍しく6時という早い時間におきてしまった。

 もう少しで始まる学校の準備としては良いのかもしれない。


 昨日は夜遅くまでゲームをしていたこともあり、寝落ちしてしまったのだろうか、電気を消さずに寝てしまったようだ。


 ボサボサの髪を描きながら洗面所へと向かいながら、日課であるメールチェックを行う。


 たわいもないニュースや友達とのメールを見ながら歯磨きをしていると


 ピーンポーン


「……む?」


 誰かが来たようでインターホンが鳴る。

 歯磨きを速攻で終わらせ、着崩した衣服を整え玄関へと向かう。


 まぁ、だいたい誰かなんて予想はついている。入り口のオートロックをのりこえここまで来てチャイムを鳴らすような奴なんて一人しか思い浮かばないからだ。


 ガチャ


「……朝から何のようだ?」


「何のようだじゃないわよ。

 早くあげて、暑いんだから」


 肩下まで伸びたサラサラの黒いロングヘアーの美少女。こんな子がいきなり訪ねて来たら心臓が胸から何度もとびだすくらい絶頂したのだろうが……

 まぁ、以前に一度はしたんだが。


 そんなことは置いておき、もう俺にはそんなことは起きない。

 なぜかって?こいつは義理の妹だからだ!


「今日はどんな用事で来たんだ?」


「メール見てないの?撮影で近くまで来たから少し休憩させて

 って書いてあるでしょ。


 こんな美女からのメールくらいさっさと返しなさいよ!アーーーホ!」


 ……うざすぎる。

 メールを確認すると確かにそう書いてある。


 この義妹 蒼 舞香 は2年前、俺が中3の時に父さんが再婚した人の連れ子だ。


「舞香です。よろしくお願いします。」


 当時、兄妹に憧れていた俺としてはこんなお淑やかなな美女とそんな関係になれるなんて夢にも思ってなかったため、一個下のこの美少女と家族になれることをとても喜んだ。


 だが、月日が経つにつれ夢は現実へと引き戻された。


 ー はやく、それとってよ! ー


 ー ねぇ、どいてくんない? ー


 ー アイス食べたい!買って来てよ! ー


 などと、お淑やかな義妹の姿は跡形もなく暴君と奴隷のような関係になった

 俺たち兄妹の関係を、一部の友達は羨ましがっていたが俺は少しうんざりしていた。


 そして、妹のアイドルデビュー、俺の高校進学などもあり、父さんに家を出たいと直訴のすえに、はれて一人暮らしを満喫中……のはずが、目の前の光景の

 通り、月にいや週に3回は俺の部屋をこの義妹は訪ねてくる。


「……なぁ、お前も今では売れっ子アイドルな訳だし、彼氏と間違えられてスキャンダルになるかもだし、こうやって俺の部屋に入り浸るのはお兄ちゃんよくないと、思うなぁー」


「は?そんなの私の勝手でしょ?てか、俊介と私が恋人なんて……お、思う人なんているわけないでしょ!」


 いや、そんな顔赤くしてまで怒るか?なんかすごくギャーギャーいってるし、あの時のお淑やかな義妹はどこにいったんだ……


「と、とにかく!今日夜まで撮影で、明日早くにここらへんで用事あるから泊まりにくるからね!部屋片付けときなさいよ!じゃあね!ばか兄貴!」


「え、え〜……」


 めちゃくちゃ早口でそう言うと玄関をバタン!と閉めて舞香はどこかへ

 行ってしまった。


「まぁ、いっか。とりあえず昨日の続きでもするか」


 そう呟き俺は、コントローラーを手にゲームの世界へと行くことにした。





 *





 30分ほどゲームをしていると、


 ピロン


 携帯の通知音が鳴る確認してみると俺の高校の友達、甲斐 小吉(かい しょうきち)からのものだった


『おい、聞いたか?夏休み明けにうちの高校に芸能人が転入してくる話』


『え?まじで?』


『おう!まじもまじよ!まだ誰かとかはっきりわからんが、何でも1年に一人、俺ら2年に一人転入してくるらしいぞ!やべぇよ!』


 凄いテンションあがってんなこいつ……

 小吉がどんな感じで文字をうっているな考えると画面越しにふふっと笑ってしまう。


 それにしても芸能人か……


 うちのあれを見ると、芸能人といえど手放しに喜べない。


 俺はあまりテレビを見ないため、芸能人に実感が世間ほどない。


 まぁ、本来の芸能人はキラキラしており憧れの象徴のようなものであるため、転入生をみてドキドキしてしまうかもしれない。


 そんな想像をしていると、


 ピーンポーン


 と、またインターホンがなった。


 舞香が忘れ物でもしたのだろうか。そう思い、誰かを確認せずに玄関をあけると、



「あ、あのお隣に越してきました者です。よろしくお願いしま……あれ?もしかして俊、くん?」


「……え?絵梨花ちゃん?」


 インターホンを押し隣に越してきたと言った女性は、俺の記憶の中に鮮烈に残る綺麗な銀髪をした女性、上田絵梨花だった。


「久しぶりだね俊くん!まさか、お隣さんが俊くんだなんて!」


「あぁ、俺も驚いたよ。いつ頃絵梨花ちゃんは帰ってきたの?」


「去年にこっちに帰ってきたの。今日から一人暮らし!もし、なにかあったら助けてね?」


 俺と絵梨花ちゃんは世間で言う幼馴染ってやつだ。同い年である絵梨花ちゃんと仲良くなるのにそう時間はかからず、よく家の近くで一緒に遊んだものだ。


 だが、小4の夏に絵梨花ちゃんの親の転勤で海外へと引っ越したこともあり、そこからは疎遠のようになったがこうして再会した、運命とは繋がるもんだな


 それにしても、ロシアとのハーフだったか相変わらず綺麗な天然の銀髪だ。

 ちょっと見ない間に凄い美人になってる。それに、少し前屈みで話していることもあり大きな胸の谷間がチラチラ見え隠れしている。交際経験なしの俺からしたら、胸のドキドキがさっきからとまらない。




「……ねぇ?聞いてるー?」


「ん、ん?ごめん。もう一回言って?」


「もーちゃんと聞いてよー!今度一緒に遊びにいかない?話したいこともたくさんあるしさ!」


「あぁ、いいよ。楽しみにしとく。」


「えへへ。そうしててね!じゃあ連絡先教えてくれる?」


 そう言い、絵梨花と連絡先を交換する。


「ありがと!それにしても、お隣さんが俊くんかぁ〜これからが楽しみになっちゃった!じゃあ、また連絡するね!」


「あぁ、またな!」


 バイバーイと手を振りながら、隣の自室へと帰る絵梨花


 この出会いが三人の関係をあれほどまでに変えるとは、この時は思いもしていなかった。

 

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