父子家庭の中学生がただ料理を作るだけの話

大西元希

第1話 はじめまして

はじめまして。赤坂 美玲っていいます。

私は今から、トンカツを作っていきたいと思います。

商店街の肉屋で買った豚肉。それを包丁で叩きます。とんとん。

三分ほど叩いたら、豚肉に小麦粉、といた卵、パン粉をつけます。

それが終わったら油を熱します。


少し自分語り——小学校二年生の頃に父と母が別れて、それから仕事と家事を両立する父の背中を見てきました。とても大変そうで……なにか手伝いたいと思って、五年生のときに家庭科の授業で習ったとんかつを父に振舞ったら、とても喜んでいて何度も「ありがとう」と繰り返していました。


熱した油に豚肉を入れます。じゅわわ。


また自分語り——それから少しづつ料理を手伝って、今では料理は私の担当です。

父にはほんと、いろいろ迷惑かけたし、これからも迷惑をたくさんかけるだろうから……少しでも負担を無くそうと思ってます。


いい感じに豚肉がきつね色になったら油から出して、クッキングペーパーの上に避難させます。油をきるためです。


揚がった豚肉——トンカツを皿に盛り付けます。


「ただいまー」

あっ、父が帰ってきた。ではまた。

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